東京電力と沖縄電力を除く8つの電力会社が7月2日の節電対策の開始を前に、今年度と10年後の年間の需要見通しを相次いで発表した。需要のピークを示す「最大電力」に関しては、北陸を除いて昨年度比で軒並み増加する見通しを示した。10年後の2021年度に向けても増加を見込む電力会社が多い。
各電力会社の需要見通しは2種類の指標で発表される。1つは年間を通じて販売する電力の合計量、もう1つは個々の瞬間に必要とされる電力の最大値である。このうち後者の「最大電力」(ピーク)を上回る供給力がないと停電を引き起こすため、各電力会社は最大電力の見通しに基づいて供給能力を調整する必要がある。今夏に関西や九州などで需要と供給のバランスが懸念されているが、この問題も最大出力に関することである。
実は電力会社は毎年度末までに、次年度と10年後の需要と供給の見通しを国に報告することになっている。2012年度の予測値も3月末に報告する必要があったが、ほとんどの電力会社が節電効果の分析に時間がかかることを理由に需要の見通しを「未定」と報告したようだ。このため7月からの節電対策を実行する直前になって、東京電力と沖縄電力を除く8つの電力会社が相次いで予測値を発表した(図1)。
各電力会社の見通しによると、最大電力は北陸を除く各地域で2011年度よりも大きくなる。伸び率が最も大きいのは東北で8.0%の上昇、次いで東京が7.8%の上昇になる見通しだ。ただし東京は昨年度に報告した数値であり、修正される可能性がある。心配される西日本では、中国が6.6%、関西が6.0%と高い伸びを予測している。
一方、10年後の2021年度の需要に関しては、10電力会社すべてが猛暑だった2010年度よりも販売量が増えると見込んでいる。最大出力に関しては北海道、中部、北陸、中国、九州、沖縄の6地域が2010年度よりも上昇すると予測する一方、東北、東京、中部、四国の4地域は若干の減少を想定している。
しかし今後は企業や家庭における自家発電の増加、さらには新電力などの電気事業者による販売量の増加も予想されるため、電力会社の思惑どおりに販売量が増加するかは疑問である。
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