冬の電力需給の見通しが出揃う、リスクが高い地域は北海道電力供給サービス

沖縄電力を除く9つの一般電気事業者による、この冬の電力需要予想と供給力の見通しが明らかになった。地理的特性から、北海道電力の供給が不足する可能性が高いという結果になった。

» 2012年10月15日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 一般電気事業者9社(沖縄電力を除く)による、今冬の電力需要予測と、最大供給力見通しが明らかになった。最大電力需要に達したときの供給余力を示す「予備率」の値は九州電力が最も厳しいという結果になったが、供給不足に陥るリスクが高いのは北海道電力という見方が強い。

 需要予測は、近年で最も寒さが厳しかった2011年並みの気温を想定して算出している。ただし北海道では2010年の冬の方が厳しかったため、2010年並みの気温を想定している。今夏の節電実績を考慮し、定着した節電努力も計算に入れた。供給力は原子力発電所が追加で再稼働することはないという前提で算出したものだ。

予備率が最も低いのは九州

 各社がまとめた数字をまとめると図1のようになる。供給余力を示す予備率を見ると、九州電力が最も厳しいという結果になっている(1月は3.4%、2月は3.1%)。一般に時間の流れに応じた需要変動に対応するには、予備率が3%以上必要とする意見が多い。3%が最低限のラインだということだ。発電所のトラブルや気温の急な変動に対応するにはさらに4〜5%を加算して、7〜8%とする必要がある。

図1 9社が出した今冬の電力需要予測と最大供給力の見通しと予備率

 九州電力の予備率を見ると、まさしくギリギリの数字だ。しかもこの数字は、中部電力と中国電力から電力融通を受ける前提で算出したものだ。火力発電所のトラブルが重なったら、供給不足に陥る可能性が高い。

 しかし、供給不足に陥る可能性が最も高いのは北海道電力だ。予備率を見ると1月が6.7%、2月が5.8%と安全域ではないが他社とくらべて遜色ない数字だ。北海道電力が供給不足に陥る可能性が高いとする最大の理由は、他社からの融通を受ける体制だ。

地理的な事情が北海道のリスクを高めている

 北海道は日本の北端に位置しており、本州との間には津軽海峡が横たわっている。他社から融通を受けるには、津軽海峡の海底に通っている「北海道・本州間連系設備」に頼るしかない。

 北海道・本州間連系設備が送電できる電力は最大で60万kW。北海道電力管内で火力発電所にトラブルが発生して供給不足に陥りそうになっても、北海道・本州間連系設備を使えれば他社から最大60万kWの融通を受けることができる。しかし、北海道・本州間連系設備にトラブルが発生して停止してしまったら北海道は文字通り孤立する。孤立した状態でトラブルが発生したら打つ手がない。

 北海道に比べると九州は、すでに中部電力と中国電力から融通を受けることを前提にしているが、必要になれば関西電力などほかの電力会社から融通を受けるルートがある。孤立して打つ手がなくなる可能性は低いということだ。

甘い見積もりは事故の元

 9月の連休明けに北海道電力と東北電力が、急な温度上昇や発電所のトラブルで電力供給体制が危機に陥ったことを思い出してほしい。現在各社が出している数字は、トラブルが発生しないということを前提にしているようにも見える。安定した電力供給を考えるなら、節電目標値を設定して節電要請を出すべきではないかと思う。

 今後政府は「需給検証委員会」で各社が提示した数字を吟味し、節電要請に目標値を設定するかどうかを検討する。

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