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» 2012年10月26日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:日本でも洋上風力発電は実力を発揮できるか、実証研究が始まる

千葉県銚子市沖に日本最大の洋上風力発電設備が完成した。同じ規模の設備が今年度中に福岡県北九州市沖にも完成する予定だ。ヨーロッパではかなりの実績を残しているが、日本で実用化までこぎつけるには、まだ調査しなければならないことが多いようだ。

[笹田仁,スマートジャパン]

 NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と東京電力は千葉県銚子市沖に日本最大の洋上風力発電設備を建設した(図1)。検査と試運転を済ませ、2013年1月から発電を開始する予定。これは洋上風力発電の実用化に向けた実証実験であり、発電しながら周囲の環境の調査や、発電施設の運用方法などについて調査する。実験期間は2015年3月まで。

NEDO_TEPCO_Wind_Turbine_1.jpg 図1 NEDOと東京電力が銚子市沖に建設した洋上風力発電設備。右側に見えるのは風況を観測するための設備

 今回完成した設備は高さが126m(風車の中心であるハブまでの高さは80m)で、風車の直径は92mという巨大なものだ。この設備1台だけで最大で2.4MWの電力を出力できる。

 この洋上風力発電設備が運転を始めると、風車は1分間に9〜17回転のペースで回転する。風速が大体秒速13mに達すると最大出力である2.4MWで発電する。

 洋上風力発電は、人間がいない洋上に建設するため、景観や騒音で問題を起こす可能性が低い。地上に風力発電設備を建設しようとすると、風況は良くても地形が問題になって建設できないということがある。道路が邪魔をして建設をあきらめざるを得ないこともある。

 さらに、洋上は地上に比べて風況が良く、風があまり乱れないと言われている。あちこちに建設できて、発電規模が大きく、発電能力を左右する風況も良いとなれば、洋上風力発電への期待は大きく膨らむ。実際、ヨーロッパ各国では洋上風力発電設備が急速に普及し、かなりの量の電力を生み出している。

コストの問題が重くのしかかる

 もちろん、洋上風力発電にも問題はある。まず挙げられるのは発電設備の建設コストの問題だ。今回は部材1つ1つを地上で製造し、船で沖まで運搬し、沖に設置したクレーンで持ち上げて設置した。地上に建設するよりも手間も時間も費用もかかる。

 風車だけでなく変電設備などの施設も建設する必要がある。さらに、発電した電力を地上に送るために、海底ケーブルを敷設しなければならない。海底ケーブルの敷設にもかなりのコストがかかる。

 実際に運用が始まってもコストがかかるということは変わらない。メンテナンス要員を洋上に送り込まなければならないからだ。メンテナンスが長時間に渡るときのために、発電設備のそばにメンテナンス要員が滞在できるスペースも用意したほうが良いという意見もある。

 洋上に風力発電設備を建設して、売電を始めても建設コストと買取価格によっては、建設コストの回収に何十年もかかってしまうということもあり得る。NEDOも洋上風力発電の本格的な実用化のためには、低コストで洋上に発電設備を建設する工法を開発する必要があるとしている。

洋上は本当に風況が良いのか

 先に述べたように、ヨーロッパでは洋上風力発電が実用のものになっている。この事実が「洋上は地上に比べて風況が良く、風があまり乱れない」という評判を作っている。

 しかしNEDOは、日本の気象条件はヨーロッパとは異なるとしており、ヨーロッパにおける洋上風力発電の評判をそのまま受け取ることに対して警鐘を鳴らしている。さらに、日本には日本海側と太平洋側で気象環境が変わるという特性があるという。

 最大の問題は、日本周辺の海域の風況がほとんど明らかになっていないことだ。NEDOは日本全国の陸地の風況データは収集して公開しているが、洋上についてはほとんどデータがない。

 この問題もコストに影響する。現在、日本において陸上に風力発電設備を建設するときは、NEDOが公開している風況データが建設地決定の大きな指針になっている。NEDOのデータで候補地を絞り、数カ所で実際に風況を調べて建設するという流れになるだろう。

 洋上風力発電の場合、地点別の風況データが存在しない。建設地を決める際には建設者が自身でコストを負担して風況を調べなければならないのだ。

 2012年10月に前田建設工業が山口県下関市沖に大規模な洋上風力発電所を建設することを明らかにした。建設予定地は周囲の海域が遠浅であり、比較的建設が容易であるという良い条件を備えているが、風況は調べてみないと分からない。前田建設工業は、建設を決定する前に、1年間にわたって建設予定地周囲の風況を独自に調査したという。

 NEDOは今回の実験で、発電設備を立てた海域周辺の風況の調査を続けるという。そのために、発電設備からやや離れた場所に風況を観測する施設を建設している。運転を続けながら風況、稼働状況、メンテナンス体制などについて研究を進めるものと考えられる。

 今回の実験で太平洋側(銚子市沖)と日本海側(北九州市沖)の気象条件の違いと、それぞれの地点の風況が明らかになるだろう。さらに、陸上からごく近い海域でどれほどの風を期待できるのかということについて、目安となるデータも得られるだろう。そのデータが洋上風力発電を始めようという企業、団体にとって価値あるものになることを期待したい。

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