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» 2012年11月01日 13時00分 UPDATE

スマートハウス基礎講座(1):なぜ今、スマートハウスなのか

このところスマートハウスに大きな関心が寄せられている。わが国が抱えるエネルギー問題の解決策のひとつとして、家庭で取り組むことができる最も有効な方法と考えられるからである。スマートハウスが広がってきた時代背景から始めて、主要な設備機器やシステムの仕組みについて解説していく。

[渡辺直哉/旭化成ホームズ,スマートジャパン]

 スマートハウスにこれほど関心が集まるようになったのは、いつからだろうか。2011年3月11日に発生した東日本大震災が大きな契機となっていることは間違いない。しかし、それ以前の2009年から、経済産業省が公募した「スマートハウス実証プロジェクト」が産・学・官で連携しながら実施されていたのも事実である。

 スマートハウスとは、情報技術(IT)を駆使して、家庭内のエネルギー需給を賢く管理・制御する次世代住宅、と一般的に定義されている。その一方で、家庭のみならず地球のエネルギー問題やIT技術の飛躍的発展など、時代のトレンドに歩調を合わせた環境配慮型の最先端住宅ととらえることもできる。

 そこでまずはスマートハウスが広く普及するに至るエネルギー問題の変遷から簡単に説明しておこう。1973年の第1次オイルショックによって原油価格の高騰が問題となったが、その後は原油価格も下降して、家庭のエネルギー消費量は着実に増えていった。1990年代になると、エネルギー消費がもたらすCO2等の温暖化ガスによる地球環境負荷の増大こそが切迫した問題となり、CO2削減が大きな課題となる。

 そして、昨年の東日本大震災およびその震災によって引き起こされた原子力発電所の事故によって、電力の高品位安定供給や分散型エネルギー活用の必要性が省エネルギーとともに認知されるようになった。これは住まい手にとっても切実な問題で、電気料金の値上げや電力不足、計画停電といった身近な問題として顕在化した。

冷暖房のエネルギー消費量は意外に低い

 この間に家庭でのエネルギーの消費状況はどのように変化したのだろうか。家庭におけるエネルギー消費総量は2010年の時点で、京都議定書の基準年である90年比で37%の増加となっている。

 一般の家庭で消費するエネルギーは、冷暖房がほとんどを占めると思われがちである。しかし実際のところ2010年における用途別のエネルギー消費量の割合では、冷暖房が約25%、給湯・調理が約40%、照明・家電が約35%で、意外なほど冷暖房の割合は小さい(図1)。

asahikasei_1_1.jpg 図1 家庭で消費する用途別のエネルギー量の変化

 家庭でのエネルギー消費量の増大を背景に、オイルショック以降、冷暖房負荷軽減のための高断熱・高気密といった住宅性能の強化、設備システムの高効率化といった省エネルギー技術関連の開発が進んだ。一方、太陽光発電をはじめとする代替エネルギーの活用技術も急速に進化した。

 さらに近年になると、給湯・家電までを含めた総合的な省エネルギー対策が求められるようになり、建設してから解体するまでの住宅のライフサイクル全体での総エネルギー消費量を考慮に入れた対策も講じられるようになってきた。

 そして、昨年の大震災以降、不安定な電力供給に対して、代替エネルギーのさらなる活用と、各家庭の電力需要に応じたきめ細かいエネルギーの最適利用が求められるようになる。住まい手の側からすれば、災害に備えたエネルギーの自給自足も重要な課題になった

ITで設備の連携・制御が容易に

 このようなエネルギー問題の視点からの動きとは別に、ITの目覚ましい進化も見逃せない。1988年には旧・通商産業省(現・経済産業省)、旧・郵政省(現・総務省)、旧・建設省(現・国土交通省)のほか、住宅関連の団体や企業により、住まいの高度情報化に向けて業界横断的に取り組む「住宅情報化推進協議会」が設立された。この協議会を通じて、電話回線を利用して家庭内の設備を制御する「オートメーションハウス」が展示されるなど積極的な取り組みが始まった。

 その後、インターネットが一般家庭に浸透してITの普及が飛躍的に進むと、照明・家電を含む家庭内設備の連携・制御が容易に実現できるシステムが現実味を帯びるようになってきた。スマートハウスはこのような各種技術の躍進のもとに、震災後のエネルギー問題を解決する手段として一躍注目を集めることになったのである。

 しかし、スマートハウスは未来に向けてエネルギー問題を解決するだけにとどまらない。住まい手にとって新しいライフスタイルを形成していくうえで、非常に重要なカギとなる数多くの可能性に満ちた生活の場になる。

 次回以降ではスマートハウスを構成する「創エネ・蓄エネ・省エネ」のための設備機器の仕組みと魅力について詳しく解説する(図2)。そして各設備機器をITで連携するHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)についても触れながら、スマートハウスが実現する新しいライフスタイルを描いていく。

asahikasei_1_2.jpg 図2 スマートハウスを構成する「創エネ・蓄エネ・省エネ」のための設備機器

連載(2):「創エネ・蓄エネの実現方法と導入メリット」

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