創エネ・蓄エネの実現方法と導入メリットスマートハウス基礎講座(2)(1/2 ページ)

スマートハウスを実現するためには、「創エネ・蓄エネ・省エネ」のための設備機器を導入して、効率的に利用できるようにする必要がある。創エネと蓄エネのための太陽電池や燃料電池、蓄電池、さらには二世代住宅に有効なエネルギーシェアシステムの導入方法とメリットを解説する。

» 2012年11月13日 13時00分 公開
[渡辺直哉/旭化成ホームズ,スマートジャパン]

連載(1):「なぜ今、スマートハウスなのか」

 「スマートハウス」とは、情報技術(IT)を駆使して、家庭内のエネルギー需給を賢く管理・制御する次世代住宅と一般的に定義されている。もう少し噛み砕いて説明すると、3つの構成要素で成り立つエコハウスのことを指す。

 電気を「つくる」「ためる」「賢く使う」ためのスマートな設備を搭載して、住宅そのものから家電までをきめ細かく制御してエネルギーを効率的に利用することを目指したものである。このうち今回は電気を「つくる」と「ためる」ための設備について見ていこう。

「電気をつくる」太陽電池と燃料電池

 電力会社の発電所から送られてくる電気に頼るのではなく、自宅で必要な電気を自宅で生み出す。電気をつくるための設備の代表選手は「太陽電池」と「家庭用燃料電池」である。

 太陽電池は無尽蔵にある太陽光を燃料として電気を生み出す。一方の家庭用燃料電池は都市ガスやプロパンガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて電気をつくり、その排熱を給湯や暖房に利用する。どちらも自宅で発電するため送電ロスがなく、燃焼させることもないのでCO2を大気に放射することがほとんどない。環境性に優れたクリーンエネルギーである。

 導入にあたって懸念されることは、設置するためのコストだろう。どちらの電池も普及に伴い、ここ数年で大幅にコストダウンが進み、いまもメーカーの努力は続いている。どちらの電池に対しても国をはじめとする行政機関が助成事業を実施しており、初期費用をさらに抑えることも可能になっている。

 太陽電池の動向から見てみよう。家庭用で標準的な出力3kWの太陽光パネルを搭載した住宅の年間発電量は約3000kWhになる。季節や天気に左右されるが、1日に平均すると8.2kWhの電力を発電する。そのうち家庭で消費されるのは45%ほどと言われている。

 従って余剰電力は55%、すなわち4.5kWhを1日に売電することができる。現在の固定価格買取制度では、1日に190円弱の収入が得られることになる。年間にすれば7万円ほど手元に戻ってくる。

 太陽電池は近年、このような買取制度のサポートが追い風となり、特に新築住宅では積極的に採用するケースが多くなっている。ある調査会社のデータによれば、大手住宅メーカー8 社(旭化成ホームズ、住友林業、積水化学工業、積水ハウス、大和ハウス工業、パナホーム、ミサワホーム、三井ホーム)の供給する新築戸建住宅における太陽光発電システムの搭載率は、2008 年度の15%から2009 年度には39%、さらに2010 年度には52%まで上昇している。当分、この勢いはとどまることなく拡大し続けるだろう。

太陽光発電はフラット屋根のほうが有利

 太陽電池の設置で配慮すべきことは、設置方位と設置角度だと言われている。設置方位によって発電効率には大きな差が生じるが、実は設置角度による差はそれほど大きなものではない。30度に傾けて設置することが理想的ではあるが、かりに10度で設置しても30度の場合と比較して効率は5%ダウンするにすぎない。

図1 フラット屋根は全面に太陽光パネルを設置できる

 このような視点で見れば、太陽光パネルは勾配屋根に設置するよりもフラットな屋根に設置したほうが有利である。切り妻屋根のような勾配屋根の場合、南側の屋根面には太陽光パネルを全面に搭載することも可能だが、北側の屋根面に設置すると発電効率が大幅に落ちるうえ、光の反射などで近所に迷惑をかけることも問題になっており推奨されていない。従って、屋根面積の半分ほどしか搭載することができない。

 一方、フラット屋根の場合、全面に大容量のパネルを南方面に向けて設置できるので、総発電量が勾配屋根よりも大きくなる場合が多い。勾配屋根と異なり、設置角度は10度になって不利な面はあるが、前述したように発電効率の下げ幅は限定的で、むしろ設置枚数を多く確保できる点で有利と言える(図1)。

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