排出量取引制度の上下限価格 2026年度1700〜4300円/t-CO2から毎年3%上昇へ第7回「排出量取引制度小委員会」(1/3 ページ)

2026年度からスタートする排出量取引制度。「排出量取引制度小委員会」第7回会合において、2026年度から2030年度の炭素価格(排出枠価格)についての上下限価格案が示された。

» 2026年01月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 改正GX推進法では、CO2の直接排出量が10万トン以上の事業者に対して、2026年度から排出量取引制度への参加を義務付けている。

 カーボンプライシングのうち、炭素税(化石燃料賦課金)は事前に炭素価格を決める方式であるのに対して、排出量取引制度において炭素価格は排出枠の需給バランスにより事後的に決まるという違いがある。事業者の確実な脱炭素投資を促進していくには、炭素価格つまり排出枠価格の予見性を高めることが重要である。

 このため改正GX推進法では、排出枠の価格高騰対策としての「上限価格」、価格下落対策としての「下限価格」を設定し、その価格帯をあらかじめ示すとともに、5年間(2026〜2030年度)の上下限価格を毎年度引き上げることにより、脱炭素投資を促すこととしている。

図1.排出量取引制度 上下限価格のイメージ 出典:排出量取引制度小委員会

 経済産業省の「排出量取引制度小委員会」第7回会合では、排出量取引に関する詳細制度設計の締めくくりとして、2026年度から2030年度の上下限価格案が示された。

排出枠価格の安定化に関する考え方と対策

 排出量取引制度において、制度対象者は自社の削減費用と排出枠の市場価格を比較し自由に取引を行うことにより、社会全体としての効率的な排出削減が可能となる。十分に流動的な排出枠取引市場において形成される公正な炭素価格(排出枠価格)は、制度対象者に対する重要な価格シグナルとなる。

 排出枠取引市場における価格発見やその価格の公示は、排出量取引制度において最も基本的かつ不可欠な機能とされている。よって本来、市場価格に対する外部からの介入は避けることが原則である。

 ただし、日本の温室効果ガス排出量の6割程度の事業者をカバーする排出量取引制度において、急激な排出枠価格の高騰は、その価格転嫁を通じて一般消費者等にも大きな影響を与えるおそれもある。このため、国内産業活動や国民生活を守るための「セーフティバルブ」としての上限価格がまずは求められる。

 排出枠価格の高騰等により制度対象者の義務履行に支障が生じる状況として経済産業大臣が告示した場合、排出枠が不足する事業者については、「不足量×上限価格」の支払いによって、義務を履行したものとみなされる。

 また、適切な炭素価格(排出枠価格)の維持は、脱炭素製品・サービスの競争力確保の観点から重要である。仮に排出枠価格が長期にわたり低迷することが想定される場合、事業者はそもそも脱炭素投資に踏み切ることが困難であり、また先行的に脱炭素投資を行った事業者の投資回収も困難となる。このため、脱炭素投資の予見性確保の観点から、下限価格の設定が求められる。

 一定期間以上、市場価格が下限価格を下回る場合、国はGX推進機構を通じて「リバースオークション」を行い、排出枠の流通量を調整するとともに、翌期の割当基準の強化が検討される。

図2.排出枠価格の主な変動要因と対策 出典:排出量取引制度小委員会

 なお、経済活動そのものの拡大/低迷に伴う排出枠の不足や余剰発生に対しては、活動量に応じた排出枠割当量の調整を別途行う予定としている。

 また、そもそも市場における公正な価格形成は、市場に十分な流動性があることが前提である。仮に、制度対象者が将来的な制度の強化を見越して、排出枠を過度にバンキング(翌期への繰り越し)するならば、排出枠の市場供給量は大きく減少し、現時点の削減費用が排出枠価格に反映されないこととなる。

 このとき、排出枠は上限価格へ張り付くことや、そもそも必要量を調達できないことも懸念されるため、経済産業省ではバンキングの抑制に向けた対策を別途検討する予定としている。

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