排出量取引制度の上下限価格 2026年度1700〜4300円/t-CO2から毎年3%上昇へ第7回「排出量取引制度小委員会」(2/3 ページ)

» 2026年01月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

本制度で想定される排出枠価格の範囲

 2026年度開始の排出量取引制度第2フェーズでは、排出枠の全量を無償で割当てることとしているが、その初期割当量は「ベンチマーク方式」又は「グランドファザリング方式」により決定される。ベンチマーク方式のカバー率は、制度対象者の排出の9割程度と見込まれている。

 第2フェーズのベンチマーク方式では、基準年度における標準的な排出原単位を各業種の「上位50%」水準(つまり、平均的な値)として、5年後の2030年度時点のベンチマーク水準は「上位32.5%」としている。これは現行の省エネ法ベンチマーク制度において求められる水準と同等であり、多くの業種において、多くの事業者が達成可能な水準として設定されたものである。

図3.業種毎のベンチマーク水準の設定方法と数値例 出典:排出量取引制度小委員会

 また、第2フェーズにおける各業種のベンチマーク水準は、2030年度までの5年内に実施可能な「省エネ」や「燃料転換」による対策を想定して設定されたものであるため、先述の「過度なバンキング」等が生じない限り、排出枠価格はこれらの対策費用の範囲内で推移すると予想されている。

2026年度の下限価格

 排出量取引制度において、下限価格は、経済状況等の影響で排出枠の価格が一時的に下落した場合にも、最低限の削減投資インセンティブが確保されるような水準とする必要がある。

 CO2排出量削減のためにはさまざまな対策を取り得るが、「省エネ」はそれ自体がエネルギーコストの削減につながる経済的な対策であり、最も一般的に実施されている削減努力である。また省エネ法では、工場等の設置者や輸送事業者・荷主等の事業者全てに対して、省エネ努力義務を課している。

 これらを踏まえ、排出量取引制度の2026年度の下限価格としては、現時点の省エネ対策費用を適用することとした。ただし、事業者各社の省エネ対策費用はさまざまであり、具体的な算定も困難である。このため、客観的な指標として、「J-クレジット(省エネ)」の取引価格を参照することとした。

図4.省エネJ-クレジットの価格推移 出典:排出量取引制度小委員会

 図4のように、省エネJ-クレジット価格は直近では5,000円超まで上昇しているが、これは排出量取引制度の義務化による、将来的な価格上昇への期待感が織り込まれた価格となっているおそれがある。

 よって、より実質的な省エネ対策コストを把握する観点から、J-クレジット価格が高騰する前の2023年10月〜2024年9月の市場価格を加重平均することとした。なお、下限価格は削減インセンティブが確保される最低限の価格として定めるものであるため、100円単位で切り上げて、「1,700円/トン」とした。

2026年度の上限価格

 目前に迫った第2フェーズにおいて、多くの制度対象者が現実的に取り得る削減対策としては、省エネのほか、「燃料転換(石炭や重油等の排出係数の高い化石燃料から、LNG等の排出係数の低い化石燃料への転換)」がある。

 一般的に、燃料転換は事業者のエネルギーコストが増加する排出量削減対策であるため、排出量取引制度の2026年度の上限価格としては、標準的な燃料転換費用を適用することとした。

 具体的には、非効率石炭火力(発電効率40%)から高効率LNG火力(発電効率54.9%)への転換を想定し、各燃料のCIF価格に燃料諸経費(石炭2,300円/t、LNG3,100円/t)を加味し、石炭火力とLNG火力の運転費用が同等となる水準の炭素価格として算出した。

図5.燃料転換コストの推移 出典:排出量取引制度小委員会

 なお、石炭・LNGのいずれも価格は大きく変動するため、直近10年の中央値を採用する。また上限価格は、過度な高騰を避けるために定めるものであるため、100円単位で切り下げて、「4,300円/トン」とした。

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