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» 2012年11月02日 09時00分 UPDATE

5年でこれだけ進化しました(2)エアコン:買い替え周期に合わせて開発、交換で消費電力が80%減ることも

エアコンはオフィスでも家庭でも最も電力を消費する機器だ。節電のために設定温度を調節して、多少の暑さ寒さは我慢する、というのが一般的な習慣になりつつある。しかし、最新のエアコンに交換すれば、さほど我慢する必要はなくなるかもしれない。

[笹田仁,スマートジャパン]

 エアコンの進化の過程と、それに伴う消費電力量の変化について空調機器で大きなシェアを握るダイキン工業に聞いた。エアコンは一度設置すると長期間交換しないことが普通だ。ダイキン工業の調べでは、家庭用エアコンの買い替え周期が10〜11年。業務用エアコンでは15年くらいになるという。製品開発も、買い替え周期を意識して進めている。そのため、5年という単位で見ると大きく進化しているということはない。

比較対象は15年前の製品

 ダイキン工業が販売している業務用エアコンの最新製品は「Eco-ZEAS80」(図1)。2010年に発売したもので、毎年少しずつ機能を追加しながら新製品を発売しているが、基本的な性能は2010年に発売したものと変わらない。

5_Years_After_Air_Conditioner_1.jpg 図1 ダイキン工業の業務用エアコン「Eco-ZEAS80」。写真は2012年モデル。出典:ダイキン工業

 Eco-ZEAS80という製品名の末尾にある「80」という数字は、「15年前の製品に比べて消費電力量をおよそ80%削減した」ことを意味しているという。買い替え時期に入っているエアコンをこの製品に入れ替えれば、消費電力をおよそ80%削減できるということになる。設定温度を調節して、我慢しながら古いエアコンを使い続けるよりも、買い換えた方が消費電力を大幅に削減できるということだ。

 では、15年の間にどのような進化があったのだろうか。ダイキン工業によると最も大きな進歩はインバーターの導入だという。インバーターとは直流電流を交流電流に変換する回路。ただし、単純に変換するわけではなく、周波数を自由に変えられる。インバーターを使ってエアコンが搭載しているモーターを制御することで、低速から高速まで回転数を自由に変えられるようになった。

 エアコンが搭載しているモーターの中で、最も電力を消費するのは室外機に入っている「圧縮機」のモーターだ。次に大きな電力を消費するのは室外機のファンを回すモーター、室内機の送風ファンを回すモーターの消費電力は比較的小さい。

 圧縮機とは、エアコンの中心部と言える「ヒートポンプ」を構成する部品だ。エアコンは室内機と室外機の間で冷媒を循環させ、熱を運ぶことで冷房や暖房を実現している。圧縮機は冷媒を圧縮して、温度を高めて送り出す装置だ(図2)。

5_Years_After_Air_Conditioner_2.jpg 図2 エアコンは室内機と室外機の間で冷媒を循環させる。冷媒を圧縮すると温度が上がる。図のように圧縮して高温にした冷媒を室内機に送り込むと、室内に熱を放出し暖める。熱を放出し、温度が下がった冷媒は膨張させてさらに温度を下げる。その状態で室外機に冷媒を送ると外気の熱を冷媒が吸収し、温度が上がる。出典:ダイキン工業

 暖房時は室内を暖めるために高温にした冷媒を室内機に送り込む。冷房時は反対に室外に熱を放出するために高温の冷媒を室外機に送り込む(図3)。

5_Years_After_Air_Conditioner_3.jpg 図3 暖房時と冷房時を比べると、冷媒の流れる方向が反対になる。出典:ダイキン工業

 ダイキン工業ではまず、圧縮機を動かすモーターをインバーターで制御するようにした。続いて室外機のファン、室内機のファンの順にインバーターで制御に切り替えていった。

インバーターを持たないエアコンは動作が極端

 インバーターを搭載していない古いエアコンは、モーターの回転数を変えられない。そのため、室温が設定温度を超えたら運転を止め、設定温度よりも暑く(あるいは寒く)なったら再び運転を始めるという制御しかできなかった。この制御方法では、室温を設定温度で維持することはできず、どうしても冷やし過ぎ、暖め過ぎになってしまう。また、一度停止させた電気機器を再び動かし始めるには余計な電力を消費する。

 一方インバーターを利用してモーターの回転数を制御すれば、設定温度に近づいたところで運転を停止させず、室温を維持する程度の強さで運転を続ける。冷やし過ぎ、暖め過ぎで電力を無駄に消費することはなく、モーターを停止させないので、再起動時に必要な余計な電力も節約できる(図4)。ダイキン工業では、インバーターでモータを制御するようにしたことで消費電力をおよそ60%削減できたと見積もっている。

5_Years_After_Air_Conditioner_4.jpg 図4 インバーターを搭載していないエアコンの動き方(左)と、インバーターを搭載したエアコンの動き方(右)の違い。出典:ダイキン工業

センサーを利用して必要な部分だけに風を当てる

 さらに、室外機のファンと室内機のファンの回転数を状況に応じて最適に制御することで、消費電力を削減した。例えば冷房運転をしているときに外が涼しくなってきたら、室外機のファンはゆるく回し、室内機のファンを強く回す。先に述べたように室内機のファンは室外機のファンに比べて消費電力量が小さい。室内機のファンを多少強く回しても、室外機のファンをゆるく回すことによる節電効果が大きいというわけだ。

 Eco-ZEAS80は人感センサーを利用した制御機能も搭載しており、人がいるところを検知し、人が心地良いと感じるように風を当てる。冷房の場合は人に風を直接当てた方が心地よく感じ、暖房の場合は人を避けるように風を拡散させた方が心地よく感じる。

 床温度を検知するセンサーも搭載しており、暖房運転時には床を暖めるように風を当てる。床が暖かくなると人はより暖かいと感じるからだ。このようにセンサーを利用して人が心地良いと感じるように風を当てることで、必要な部分に効率良く風を当てられるようになり、消費電力を削減できた。

 ファンの回転数の制御とセンサーを利用した運転制御で、消費電力をおよそ10%削減できたと考えているという。

 消費電力節減に役立った機能としてはもう1つ、フィルターを自動的に清掃する機能が挙げられる。フィルターが詰まり始めるとエアコンは運転効率が10%ほど低下する。自動清掃機能を搭載したことで、これを防げるようになり、10%程度の節電になったという。

 インバーター制御で60%、ファンの回転数制御とセンサーを利用した制御で10%、フィルターの自動清掃で10%。合計すると15年前の製品に比べて80%節電できるという計算になる。

 ちなみに、ここ5年ではどんな変化があったのかと聞いてみたところ、センサーを利用した制御とフィルターの自動清掃機能が挙げられるという、節電効果にすると15〜20%程度だそうだ。

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