小さい落差でも大出力、日本最大規模の小水力発電自然エネルギー

工事が簡単に済み、水の流れに大きな影響を与えない小水力発電の実用化に日本各地の自治体が取り組んでいる。鹿児島県薩摩川内市は、水流の高低差が小さくても利用できるらせん水車で発電する機材を設置し、運転効率の向上、メンテナンスの省力化に向けた検証を始める。

» 2012年11月12日 07時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 薩摩川内市が導入する発電機はらせん水車を利用したものの中でも、日本では最大の出力(30kW)を誇るもの。水力発電所などの建設実績を持っている日本工営が開発したものだ。

 小水力を利用した発電機の中でも、らせん水車を利用したものは水流の高低差が2m以下とごく小さなところにも利用できるという特長がある。しかし、日本国内ではらせん水車を利用した発電機は出力が10kW以下のものばかりだ。手軽に設置できるが発電量が小さいため、小水力発電は発電コストが高くなってしまうという欠点がある。そこで、大出力の発電機を運用することで、効率良く大電力を得るための課題を洗い出し、その対策について研究する。

 具体的には発電機の回転軸が変化しても対応できるようにし、発電量を増やすことや、らせん水車を支える軸受を、注油不要のものにしてメンテナンスを楽にすること、水車の回転を受けて、歯車などを利用して回転数を上げる増速機のトラブルを減らすこと、砂などの水と一緒に流れてくる異物の影響を抑えること、騒音対策と発電機全体の製造コストを下げることといった課題に取り組む。

図1 らせん水車を利用した小水力発電機の構造と、薩摩川内市で検証する部位。(1)は発電機の効率向上、(2)は軸受を注油不要とすること、(3)は増速機のトラブル減少、(4)(5)(7)は水と一緒に流れてくる異物の影響を抑えること、(6)は騒音対策と全体の製造コスト低減を指す

 検証期間は2016年2月末までの予定。2012年秋から1年間にわたって設置予定場所の流量を測定し、並行して許可申請手続きと機材の設計を進める。2014年初頭から年末までかけて建設工事を実施し、完成次第検証を始める。

 薩摩川内市はこの小水力発電機による年間発電量を、およそ140MWh(14万kWh)と見積もっている。得られた電力は隣接する物産販売施設で利用し、余剰分を売電することを計画している。

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