太陽光発電:変換効率よりも出力1W当たりの単価に注目節電に効くシステム(1)(1/2 ページ)

短期連載「節電に効くシステム」では、節電に効果を発揮する機器の中でも2013年に注目を集めると予想できる3種類の機器について、導入前に意識すべきことを解説する。今回は太陽光発電について解説していこう。

» 2013年01月09日 09時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 2012年は大規模太陽光発電所いわゆるメガソーラーの建設に、さまざまな業種の多数の企業が乗り出した。2013年はこの動きが一段落するかもしれない。年度が変わる4月から、固定価格買取制度における買取価格が変わる可能性があるからだ。現在の1kWh当たり42円という価格が下がる可能性もある。

 とはいえ政府も、買取価格を大きく下げることはできないだろう。かつてない活況を呈している太陽光発電システム業界の勢いをいきなり止めてしまうことになるからだ。買取価格が変わらない可能性ももちろんある。2013年も太陽光発電システムの人気は衰えないだろう。

市場に流通するパネルは主に4種類

 太陽光発電システムの設置計画を立てるときに、「どの種類のパネルを使うか」ということで迷ってしまうことは多い。現在流通している太陽光発電パネルは主に、単結晶シリコン、多結晶シリコン、ハイブリッド型、化合物の4種類だ。発電能力や価格はそれぞれ異なる。用途、設置する場所、コストを考えて、最適なものを選びたい。

 太陽光発電パネルの実力を示す数字として「変換効率」が挙がることは多い。これは、面積当たりの最大出力を示すもので、パネルの面積で最大出力を除算することで得られる数字だ。

多結晶が進化し、単結晶に迫る性能を発揮

 4種類の中でも、最も歴史が長いのは単結晶シリコンを使ったパネルだ。変換効率も高い(図1)。

図1 シャープが発売している太陽光発電パネル。単結晶シリコンを使用しているだけでなく、パネル表面から電極と配線を排除して、発電能力を高めた。変換効率は16.9%。出典:シャープ

 しかし単結晶シリコンを使ったパネルは製造に時間とコストがかかり、価格も高くなりがちだ。価格が高くなる理由は、この種類のパネルで使う単結晶シリコンの製造方法にある。高温で溶かしたシリコンに「種」となるシリコン結晶を入れ、回転させながらゆっくりと引き上げる。こうするとシリコン原子が規則正しく並び、単一の結晶となる。太陽光発電パネルに使用するものは、引き上げた塊を薄くスライスしたものだ。

 製造にかかる時間、コストという問題を解決することを目指して登場したのが多結晶シリコンだ。多結晶シリコンは、立方体のるつぼにシリコンを入れて高温で溶かし、ゆっくりと時間をかけて冷ますことで完成する。このようにシリコンの塊を作ると、原子が並ぶ方向はバラバラになる。規則正しく結晶となっている部分もあるが、その部分は小さく、塊の中にいくつも結晶ができる。でき上がった立方体の塊を薄くスライスしたものを太陽光発電パネルに利用する(図2)。

図2 多結晶シリコンを利用した太陽光発電パネルを製造する手順。出典:京セラ

 多結晶シリコンは単結晶シリコンと比べて製造に手間がかからず、短時間でできるため、低コストで作れる。その結果、多結晶シリコンを利用した太陽光発電パネルは安価になる。変換効率は単結晶シリコンに劣るが、最近は多結晶シリコンの製造方法の改良が進んでいる。京セラによると、多結晶でも塊の中に多数できる結晶をきれいに、規則正しく作ることで変換効率を上げられる。このように改良が進んだ結果、近年では単結晶シリコンと多結晶シリコンの変換効率の差は確実に縮んでいる(図3)。

図3 京セラが製造販売している多結晶シリコンを利用した太陽光発電パネル。変換効率は高いもので15%近くにもなる。出典:京セラ

異なる種類のシリコンを組み合わせて効率を上げる

 ハイブリッド型は、パナソニックが製造販売している「HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin-layer)」を指すことが多い。これは、単結晶シリコンに薄いアモルファス・シリコン(結晶を作らず、原子の方向がバラバラなシリコン)を組み合わせたものだ。内部にアモルファス・シリコンの層を作ることで、発電時に発生する電荷を極力損なうことなく電流を作れる。さらに、単結晶シリコンとアモルファス・シリコンでは太陽光の中でもそれぞれ異なる波長の光に反応して発電するので、発電量が多くなる。変換効率はここで紹介している4種類のパネルの中でも最高だ(図4)。

図4 パナソニックが製造販売しているHIT太陽光発電パネル。変換効率は18.2%に達する。出典:パナソニック

 ただし、製造コストがかかる単結晶シリコンを使っているだけでなく、アモルファス・シリコンを積層するという手間がかかるため、このタイプの太陽光発電パネルは単結晶シリコンを使うものよりも高くなる。

シリコンを使わない太陽光発電パネル

 最後に残った化合物太陽光発電パネルは、材料にシリコンを使わず、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)などの化合物を使う。日本ではソーラーフロンティアとホンダソルテックが製造している(図5)。日本で流通しているものは主原料の名前から「CIS太陽電池」と呼ぶことが多い。海外ではカドミウム(Cd)などを利用して変換効率を上げているものも流通している。

図5 ソーラーフロンティアが製造販売しているCIS太陽光発電パネル。変換効率は13%程度。シリコンを使った製品とは異なり、表面が黒一色で模様が見えない。出典:ソーラーフロンティア

 化合物太陽光発電パネルは、シリコンを利用した太陽光発電パネルと異なり、パネル一面に化合物の薄膜を形成して製造する。製造に必要な材料が少なく、パネルの価格は安い。ただし変換効率は、ほかの種類のパネルと比べると劣る。

価格と変換効率の関係

 以上で解説した4方式を価格が高い順に並べると以下のようになる。

  • ハイブリッド型
  • 単結晶シリコン
  • 多結晶シリコン
  • 化合物

 変換効率を比較しても、大体上記の順序になる。価格が高いほど、狭い面積でも大きな電力を得られるということだ。では、多少高くともハイブリッド型(HIT)を選ぶべきなのだろうか? 「出力1W当たりの単価」を考えるとそうとも言い切れない。次のページでは、出力1W当たりの単価を比較しながら、それぞれのパネルの適した用途を紹介していく。

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