燃やしても燃やしたことにならない?「木質バイオマス」キーワード解説

2013年に入ってからバイオマス、特に木質バイオマス発電設備の建設計画が出始めている。木を集めて直接燃やしたり、ガス化して燃やしたりと手法はさまざまだ、では「木質バイオマス」とは何を指すのだろうか? そしてバイオマス燃焼が持っている「カーボンニュートラル」という性質はどのようなものなのか?

» 2013年01月25日 15時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 キャンプに行った時に、森の中に散らばっている枯れ枝を集めて焚き火で暖を取ったという経験がある人もいるだろう。木質バイオマスとは焚き火の燃料である「木」だ。大ざっぱに言ってしまうと、木質バイオマス発電は焚き火の規模を大きくして、蒸気タービンやガスタービンを回して発電するようなものだ。

 木からエネルギーを得る方法としては、燃やすのが最も簡単だ。木質バイオマス発電では、木を直接燃やすか、高温の密閉空間で熱処理してガスを得て、そのガスを燃やす。

 何かを燃やすと当然CO2が発生する。CO2は地球温暖化を招くとして、排出量規制がかかっている。政府が再生可能エネルギーの利用を推奨する理由の1つに、地球温暖化を招くCO2排出量を減少させるという理由がある。

 木質バイオマスは、再生可能エネルギーの1種であると認定を受けている。しかし、木質バイオマスからエネルギーを得るには燃やすしかない。燃やせばCO2が発生する。それでも再生可能エネルギーと認定を受けているのは、バイオマスには「カーボンニュートラル」という性質があるからだ。バイオマスは、燃やしてもCO2を排出したことにならないのだ。

 木質バイオマスを燃やすことで発生するCO2は、光合成のために植物が大気から吸収したものだ。いずれ森林が吸収して光合成する。燃やさずに放置しておいて、腐敗と分解を進ませてもいずれCO2を放出する。木質バイオマスは燃焼させてCO2を排出しても、地球全体のCO2濃度には影響を与えない。地球上の炭素の自然な循環の中に入っているということだ(図1)。

図1 カーボンニュートラルの考え方。出典:中部電力

 木質バイオマスとは「木」だと説明した。しかし、木でも出所はさまざまであり、出所の違いによって、社会に与える影響が変わる。

 未利用の木質バイオマスを利用して発電するということには、林業の活性化という狙いもある。林業作業で間伐材を切って集めて、木質バイオマス発電設備に持っていけば、燃焼して発電に使ってくれる。間伐材が役に立つと分かれば、より多くの間伐材が集まる。その結果、林業が活性化する。

 林業の活性化によって、防災にも役立つ。手入れが行き届いていない山林では、樹木が過剰に生い茂り、雑草も生え放題だ。樹木が過剰に生い茂ると、太陽光が林の地面に届かなくなる。その状態を放置しておくと、地面が水分を吸収する力を失い、ちょっとした強い雨で簡単に土砂崩れが起こってしまうのだ。

 経済産業省が進めている再生可能エネルギーの固定価格買取制度では、木質バイオマスを3種類に分けて、別々に買取価格を定めている(図2)。買取価格が最も高いのは「未利用木材燃焼発電」。1kWh当たり33.6円だ。林業で発生する間伐材がこれに当たる。

図2 固定価格買取制度におけるバイオマスを燃料にした場合の電力買取価格。燃料によって差を付けている。出典:資源エネルギー庁

 次に高いのは「一般木材等燃焼発電」。1kWh当たりの買取価格は25.2円だ。材木を作る過程で出る端材を燃やして発電する。最も安いのは「リサイクル木材燃焼発電」。建築物の解体などで出てくる廃材を利用した発電方法だ。買取価格は1kWh当たり13.65円。

 3種類の木質バイオマス発電のうち、未利用木材燃料発電は、間伐材を燃やすので、燃料を集める過程で林業が活性化し、災害の発生を防げるという効果を期待できる。このように木質バイオマスの間で買取価格に差を付けたのは、それぞれの発電方法が社会にもたらす影響の大きさを考えたのではないだろうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.