東京都、保有発電所の電力売却先を決める一般入札を開催へ法制度・規制

東京都は多摩川流域に保有している3つの水力発電所が発電した電力の売却先を決める入札を開催する。現在東京電力に独占的に供給している電力の売却先を、新電力などを含めて広く募集する。

» 2013年01月30日 17時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 今回、入札の対象となるのは都の交通局が管理している多摩川第一発電所、白丸発電所、多摩川第三発電所(図1)が発電する電力だ。最大出力は多摩川第一発電所が1万9000kW、白丸発電所が1100kW、多摩川第三発電所が1万6400kW。合計すると36.5MW(3万6500kW)になる。

図1 東京都交通局が管理している水力発電所。左から多摩川第一発電所、白丸発電所、多摩川第三発電所

 契約期間は2013年4月1日から2015年3月31日まで。東京都は「目標売却電力量」として、年間発電量の目安を示している。2013年度は11万6782MWh、2014年度は12万656MWhとなっている。入札する業者から見れば、購入できる電力量の目安となるだろう。

 入札に参加できるのは「電気事業者」。昨年の条例改正前は「一般電気事業者」となっていたため、東京電力に売電するしかなかった。

 今回の入札では契約期間が2013年4月1日からとなっているが、現在都が結んでいる東京電力との売電契約はまだ残っている。2013年1月25日の記者会見で猪瀬直樹知事は、契約が6年残っており、契約解消の交渉を続けているとしたうえで、契約解消の条件として52億円を要求してきた東京電力の姿勢を改めて批判した。

 猪瀬知事によると、現在は1kWh当たり9円で東京電力に売電しているという。東京電力はこの電力を得られなくなると、代わりを1kWh当たり14円で購入することになる。そこで、その差額である5円を残り6年間の買取予定の電力量で積算した額を要求している。さらに、東京都が修繕のために積み立てている16億円も要求しているという。

 やはりこのような要求は常識外れと言わざるを得ない。一般企業なら、9円で仕入れていたものが仕入れられなくなるとなったら、少しでも近い額で卸してくれる企業を探すものだ。それに、都の水力発電所は都の交通局が運営しており、修繕は都の交通局が担当している。修繕積立金は交通局がいざというときのために使うものだろう。

 猪瀬知事は新電力を育てる必要があることも強調した。現時点での新電力の供給力は一般の電力会社とは比べ物にならないくらい小さい。今回の水力発電所の電力の供給だけでなく、政府に老朽化した火力発電所のリプレースを急ぐように訴えたという。そのときは、民間資金を入れて、その発電所を民間経営にすべきとの考え方も披露した。大規模な火力発電所を持つ新電力が続々と現れれば、電力を数ある新電力に卸すだけでなく、東京電力にも卸すことになるだろう。猪瀬新知事が率いる東京都の電力改革は、次はどのような展開を見せるのだろうか。

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