洋上風力発電が北九州沖で6月に運転開始へ、国内2番目の2MW級自然エネルギー

発電能力2MW級の大型風車を使った本格的な洋上風力発電設備が福岡県北九州市の沖合で6月に稼働する。すでに3月から発電を開始している千葉県銚子沖に続く国内2番目の大型プロジェクトで、水深30メートル以上の場所に設置できるジャケット式の基礎構造を採用した点が特徴だ。

» 2013年04月05日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の再生可能エネルギーを拡大する切り札と目されるのが洋上風力発電である。狭い国土に比べて広い海域があり、風速も陸上を上回る。ただし発電設備の設置が難しく、陸上への送電にコストがかかり、海洋生物などへの影響も課題になっている。

 こうした問題点を検証するために、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に取り組んでいる大型の実証実験が2つある。1つは3月に発電を開始した銚子沖、もう1つが北九州沖のプロジェクトである。このほど北九州市の沖合1.4キロメートル、水深14メートルの場所に、高さ80メートルの大型風車と観測タワーが完成した(図1)。

図1 洋上風力発電設備の設置場所(左)と洋上風車(右)。出典:NEDO

 今後2か月程度の試験を経て、6月から2MW(メガワット)の発電を開始する予定だ。銚子沖の2.4MWに次ぐ国内で2番目の本格的な洋上風力発電が始まり、海底ケーブルを通じて陸上に送電を開始する。風車の信頼性や環境への影響なども検証して、今後の洋上風力発電の開発に生かすことが目的だ。

図2 銚子沖に設置した洋上風車と観測タワーの基礎部分。出典:鹿島建設

 北九州沖の発電設備が銚子沖のものと大きく違う点は基礎部分にある。どちらも基礎部分を海底に固定する「着床式」だが、その中でも銚子沖の設備は「重力式」と呼ばれる構造で、底の部分を大きくして安定性を高めている(図2)。

 重力式は海底の地盤が硬くて平坦な場合に向いていて、通常は水深が30メートル以下に限られる。


図3 北九州沖に設置した洋上風車の構造。出典:NEDO

 これに対して北九州沖の基礎部分は「ジャケット式」を採用している(図3)。鋼管を組み合わせて強度を高めた構造になっていて、地盤からの影響や波の力を受けにくい利点がある。

 ジャケット式は海底が平坦でなくても適用でき、水深60メートルくらいまでの場所に設置することが可能だ。

 一般に水深の浅い場所では重力式、少し深い場所ではジャケット式が適している。さらに水深60メートルを超える洋上では構造物を海面に浮かせる「浮体式」の発電設備が必要になる。浮体式の実証実験も長崎県の椛島沖で小型の風車を使って始まっている。

 この浮体式のプロジェクトでも2013年度中に2MW級の大型風車を設置して、商用レベルの発電を開始する予定だ。いよいよ2013年度は3つの方式による洋上風力発電が本格的な規模で動き出す。

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