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» 2013年04月08日 09時00分 UPDATE

自然エネルギー:海に浮かぶ未来の発電所、浮体式の洋上風力が本格始動へ(前編)

日本の再生可能エネルギーで最もポテンシャルが大きいのは洋上風力発電だ。特に注目を集めているのが発電設備を海上に浮かべる「浮体式」で、大規模な実証プロジェクトが長崎県と福島県の沖合で始まる。環境や漁業に対する影響の評価も含めて、導入拡大に向けた実用性が試される。

[石田雅也,スマートジャパン]

 風力発電の特徴は風速や風向きによって発電量が大きく変わることである。通常は風速が速いほど発電量が大きくなる。日本列島の近海では平均風速が6.5メートル/秒を超えるところが大半で、発電効率(発電機の能力に対する発電量)は30%前後に達する。陸上の風力発電だと20%前後、太陽光発電は12%程度で、洋上風力発電の優位性は明らかだ。

 日本風力発電協会の予測によると、2020年から洋上風力の導入量が増え始めて、2050年までに陸上風力と同じくらいの発電規模になる(図1)。特に大きく伸びるのが発電設備を海上に浮かべる「浮体式」で、海底に固定する「着床式」と比べると2倍以上の規模が見込まれている。

roadmap_jwpa.jpg 図1 風力発電の導入規模予測。出典:日本風力発電協会

 その理由は日本の近海に浅いところが少なく、着床式に適した場所がさほど多くないからである。一般に水深が50メートル以下であれば着床式、50メートルを超えたら浮体式を選択する。浮体式を設置できる海域は日本の周辺に広がっている。

 ただし浮体式は技術的に難易度が高く、コストもかかる。大規模な風力発電設備を海に浮かべるために、波や潮によって揺れ動くことの対策を施さなくてはならない。建設費や維持費が高く、陸地までの送電線の敷設費も着床式より多く必要になる。

 期待と課題が大きい洋上風力発電だが、すでに大型のプロジェクトがいくつか動き始めている。海岸から近い場所に設置した風力発電所が各地で商用段階に入ったほか、陸から1キロメートル以上離れた沖合でも4か所で実証実験が進んでいる(図2)。

yojo_enecho.jpg 図2 主な洋上風力発電プロジェクト。出典:資源エネルギー庁
kabashima_moe.jpg 図3 長崎県五島沖の発電設備。出典:環境省

 実証実験のうち2つは着床式、残りの2つは浮体式だ。国内で初めて浮体式の洋上風力発電が始まったのは長崎県の五島沖で、2012年6月に出力100kWの小規模な試験機が発電を開始した(図3)。

 五島列島の椛島(かばしま)から1キロメートルほどの海上に発電機が浮かび、海底まで送電ケーブルがつながっている。水深は約100メートルある。平均風速は7メートル/秒で、風力発電には十分な条件がそろっている。


kabashima1_moe.jpg 図4 浮体式のタイプ。出典:環境省

 浮体式の発電設備は揺れに対応するために、円筒形や三角構造のものなど、いくつかのタイプが開発されている。五島沖のプロジェクトでは円筒形の「スパー型」を選択した(図4)。浮体式の中では構造が簡単で、相対的にコストが安くなる。


 このほかに「セミサブ型」と「TLP型」がある。どちらも基礎部分が半分くらい海面下にあって、揺れを抑える方法に違いがある。浮体式による国内で2番目の実証実験が福島県の沖合で始まるが、スパー型に改良を加えたものとセミサブ型の両方を導入して、揺れの影響などを比較することになっている(詳しくは後編で説明)。

 一方、五島沖の実証実験では小規模な試験機に続いて、出力が2MW(メガワット)ある商用レベルの実証機を7月に設置する予定だ。風車の直径は80メートル、全体の長さは170メートルにもおよぶ(図5)。

kabashima3_moe.jpg 図5 五島沖の小規模試験機と実証機の比較。出典:環境省

 この大型の実証機を使って2015年度まで約3年間の実験を続ける。発電能力や環境への影響などを検証して、2016年度からの実用化を目指す方針だ。

 環境影響の評価項目は多岐にわたる。大気と水中の騒音をはじめ、水質、海洋生物や鳥類、景観、そして漁獲量やプランクトンの状況などを含めて漁業への影響も細かく検証する。実際に福島県沖のプロジェクトでは地元の漁業関係者から建設反対の声が上がっている。

 将来に向けて洋上風力発電を拡大するためには、五島沖や福島県沖の実証実験を通じて漁業と環境に対する影響が小さいことを証明する必要がある。2つのプロジェクトの結果は極めて重要な意味をもつ。

「海に浮かぶ未来の発電所、浮体式の洋上風力が本格始動へ(後編)」

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