結晶シリコン型の常識を覆す新型太陽電池、価格を抑えて効率を高める自然エネルギー

高効率な太陽電池は高価であり、安価な製品は効率が低い。量産規模が大きな太陽電池は全てこの方程式に従っている。この常識を覆す太陽電池が2014年下半期にも登場する見込みだ。国内ではJX日鉱日石エネルギーが販売を目指している。

» 2013年04月12日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 国内で最も広く採用されている太陽電池は多結晶シリコン型だ。例えば太陽光発電協会によれば2012年度第3四半期(2012年10〜11月)の国内出荷量のうち、40.4%が多結晶シリコン型を用いた太陽電池モジュールである。単結晶シリコン型が31.0%で続く。

 多結晶シリコン型は変換効率では単結晶シリコン型に劣る。しかし、製造コストが単結晶シリコン型よりも低いため、出力1W当たりの単価が安い。これが人気の理由だ。

 この常識を覆す、魅力的な太陽電池が2014年下半期に登場する見込みだ(図1)。米First Solarが同時期から量産を開始する。セル変換効率は量産品で21%を超える*1)という。「モジュール変換効率では18%以上を想定している。加えて製造コストでは汎用の多結晶シリコン型と近い」(JX日鉱日石エネルギー)。新型太陽電池は、単結晶シリコン型でありながら、多結晶シリコン型と同等の価格設定が可能だということだ。

図1 米First Solarが量産する太陽電池セル。出典:First Solar

*1) 多結晶シリコン型について、公的な認証機関が認めた変換効率の最高記録は、2004年5月にドイツFraunhofer Institute for Solar Systems ISEが発表した20.4±0.5%である。これは約1cm角の試作セルの数値だ。

 新型の太陽電池セルを開発したのはベンチャー企業である米TetraSun。JX日鉱日石エネルギーはTetraSunが設立した2009年から同社に出資を始めている。「2012年の中ごろに新型セルの開発にめどが付いた。量産化へ進むに当たり、当社とTetraSunが共同でパートナーを探したところ、First Solar*2)に決まったという経緯がある」(JX日鉱日石エネルギー)。2013年4月9日にはFirst SolarがTetraSunの買収を発表。JX日鉱日石エネルギーはTetraSunの技術を利用した太陽電池モジュールの国内独占販売権について、First Solarに対する独占交渉権を有しており、今後、交渉を進める。

*2) First Solarは結晶シリコン型ではなく、同社独自のCdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池を2012年度(2012年1〜12月)に、7GW量産している。

 「TetraSunの技術を利用した太陽電池モジュールの販売を2014年下期から開始した場合、2014年度の国内販売量は25MWになると予測している。なお、(TetraSun技術以外を用いた)2013年度のモジュール販売量として37MWを計画している」(JX日鉱日石エネルギー)。

 TetraSunが開発した太陽電池技術の詳細は公表されていないが、First Solarは低価格化が可能な理由を幾つか挙げている。標準的な156mm角のn型シリコン基板を利用し、高価な銀や、透明導電膜(TCO)を使用しないことが1点。次に、設計がシンプルであり、製造工程の数を抑えたことだ。

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