環境省が発表した2011年度における国全体の温室効果ガス排出量は、CO2(二酸化炭素)に換算して前年度から4.0%増加した。火力発電の拡大によって化石燃料の消費量が増えたことを最大の要因に挙げている。電源別に見るとエネルギー効率の悪い石油火力の増加が問題だ。
原子力発電所を再稼働する理由のひとつに、温室効果ガスの問題が挙げられる。このほど環境省がまとめた2011年度の温室効果ガス排出量の分析結果を見ると、火力発電の増加によってCO2排出量が大幅に増えたことが示されている。
年間の発電電力量は10電力会社の合計で前年度から5.1%減ったにもかかわらず、発電によるCO2排出量は17.4%も増加した(図1)。電源別のCO2排出量は明らかにされていないが、LNG(液化天然ガス)火力と石油火力の増加によるものであることは確実だ。
2011年度の発電電力量はLNG火力が28.0%増、石油に至っては82.1%増と2倍近くに拡大した。これに対して石炭火力は4.7%減、原子力は64.7%減という状況になっている。おそらく2012年度は石炭火力も増加したことが予想できる。
この中で特に大きな問題は石油火力の増加である。石油は石炭と並んでCO2排出量が多い。複合発電(コンバインドサイクル)方式のLNGと比べると1kWhあたりのCO2排出量は1.5倍ほど多くなる(図2)。しかも発電効率を高めるための技術開発が石炭やLNGのように進んでいない。
石油は原油国の事情によって価格が大きく変動する問題もある。最近の価格水準では1kWhの電力を作るために必要なコストはLNGの約1.5倍、石炭の約3倍も高くなる。環境・調達・価格のいずれの点でも石油火力が時代の要求に合わなくなったことは明らかだ。
電力会社は原子力発電所の安全性を強化するためにコストをかけるよりも、石油火力から高効率のLNGあるいは石炭火力に発電設備を転換するほうが長い目で見れば得策だろう。
火力発電所は建設前に環境影響評価のプロセスを完了すれば、原子力のように安全性を厳しく問われ続けることはない。さらには使用済みの燃料の処分方法に頭を悩ませる必要もなくなる。合わせて再生可能エネルギーと省エネルギーの効果が拡大していけば、国全体でCO2排出量を段階的に減らすことができる。
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