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» 2013年04月25日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:海洋温度差で10MWの発電所、年間1億3000万ドルの石油を削減

海洋には膨大なエネルギーが隠れているものの、発電所の実用化は遅れている。米ロッキードマーチンは中国企業と共同で「海洋温度差発電」に取り組む。年間の石油コストを1億3000万ドル削減可能だという。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 再生可能エネルギーのうち、最も開発が遅れているのが海洋エネルギーだ。海洋エネルギーには、潮汐、波力、海流、海洋温度差などさまざまなものが含まれている。潮汐では200MWクラスの発電所が運用されており、波力は小規模な発電に多用されている。海流と海洋温度差はいまだ実験段階だ。

yh20130425OTEC_platform_300px.jpg 図1 海洋温度差発電所。以下の図の出典:Lockheed Martin

 2013年4月、海洋温度差発電(OTEC:Ocean Thermal Energy Conversion)が、実用化に向けて一歩を踏み出した。米国の航空宇宙企業であるLockheed Martin(ロッキードマーチン)は、中国の不動産開発業者であるReignwood Groupと海洋温度差発電所建設に関する契約に調印、出力10MWの試験プラントの建設が2014年に始まるからだ。現時点では世界最大規模の海洋温度差発電所になる見込みだ(図1)。今後5年間をかけて両社はさらに大型の発電所に取り組むとした。

 今回の建設予定地は中国南部の海上。「海洋温度差」という名前の通り、海面と深海の間で海水温に差が大きな地域に適する発電方式だ。中国南部はこの立地条件に適合しているという(図2)。図2で黄色は温度差が18〜20℃、オレンジは20〜22℃、赤は22〜24℃、濃い赤は24℃以上の領域を示している。世界80カ国に適用可能であり、東南アジアや中米に適していることが読み取れる。日本も九州以南であれば建設が可能だ。

yh20130425OTEC_map_590px.jpg 図2 海洋温度差発電の適地

ベース電源に向く

 海洋温度差発電の発電量は、季節や天気、時刻などに依存しない。従ってピーク電源というより、ベース電源に向いている。発電量に変動がほとんどないため、石炭火力発電所と似たような使い方になるだろう。Lockheed Martinによれば、系統に接続しにくい島しょや、送電ケーブルの敷設に課題がある海岸沿いに向くという。

 今回建設する海洋温度差発電所は、Reignwood Groupが計画するグリーンリゾートの電力を100%まかなう計画だ。年間で130万バレルの石油を節約できる。1バレル100米ドルという石油価格を仮定すると、年間1億3000万ドルの燃料費が節約できる計算になる。加えて、CO2の排出量を年間50万トン削減できる。

 Lockheed Martinは、1970年代から海洋温度差発電の開発を進めており、米国で出力50kWの実験施設を3カ月間運用した実績もある。2009年以降、米海軍から1250万米ドルの研究資金を得て、基幹部品の開発とパイロットプラントの設計を進めてきた。今回の契約は、これらの研究開発が実を結んだ形だ。

 海洋温度差発電の仕組みを図3に示す。蒸気タービンを利用する原子力発電所といくぶん似た仕組みだ(放射線は全く発生しない)。まず図下の紫色のパイプでは沸点の低い作動液体がポンプによって、左上に運ばれる。水面から取り込んだ海水(オレンジ色)と円筒形の熱交換機で接触し、作動液体が蒸発、タービンを回して発電する。その後、深海の冷たい水(水色)で熱を奪われて再び液体に戻るというサイクルを繰り返す。

yh20130425OTEC_mechanism_400px.jpg 図3 海洋温度差発電の仕組み

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