発電所の建設で課題になる「環境影響評価」キーワード解説

将来の電力供給体制を強化するうえで、発電所の新設・更新が急務になっている。ただし発電設備が自然環境に大きな影響を与える可能性があり、事前に「環境影響評価」を実施することが法律で義務づけられている。現在は手続きが完了するまでに3年程度かかるため、政府が簡素化に動き始めた。

» 2013年06月07日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 法律で環境影響評価が義務づけられている事業分野は13種類に及んでいて、そのうちの1つが発電所である。当初は水力、火力、地熱、原子力の4方式が対象だったが、2012年10月から風力も加えられた。

 原子力以外は発電規模が大きい設備だけが対象になる。水力は3万kW以上、火力は15万kW以上、地熱と風力は1万kW以上である。この基準以下の設備でも75%以上の規模(例えば地熱と風力では7500kW以上)の場合は簡易的な評価が求められる。

 環境影響評価の手続きは3段階に分かれていて、順調に進んでも完了までに3〜4年を必要とする(図1)。その間に監督官庁や自治体への届出を含めて膨大な作業を求められる。新しい発電所を建設したり古い発電所の設備を更新したりするうえで大きな障壁になっていることは否めない。

図1 発電所の建設に必要な環境影響評価の手続き。出典:経済産業省

 とはいえ新しい発電設備によって、動植物の生息、騒音や振動、さらには農業や漁業など既存産業にも被害を及ぼしかねないため、綿密な影響評価は欠かせない。今後の課題は評価の精度を落とさずに、手続きを簡素化して完了までの期間を短縮することにある。

 政府は6月5日に発表した成長戦略の中で、火力・風力・地熱による発電技術を進化させて、競争力のある産業に育成していくことを宣言した。それに伴って3方式については発電設備の環境影響評価(アセスメント)の期間を半減させる方針を明らかにしている。これにより発電所を新設・更新する期間が1〜2年程度は短くなる見通しだ。

 特に風力と地熱は日本に適した再生可能エネルギーとして有望視されながらも、環境影響評価をはじめとする各種の法規制によって期待ほどには広がっていない。再生可能エネルギーと自然環境は共生できることが望ましく、いかにバランスをとって推進していくかが重要になる。火力や原子力に依存しない電力供給体制を構築することは自然環境の保護にもつながる。

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