関西電力最大の火力発電所で新技術が導入、姫路第二の出力を約37万kW追加電力供給サービス

LNG火力発電は火力を支える最大の柱だ。関西電力はLNG火力の設備を従来の汽力発電からコンバインドサイクルに置き換えることで効率を向上、出力を約37万kW積み増していく。

» 2013年06月11日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 現在の日本の火力発電を支えているのは液化天然ガス(LNG)だ。石油はもちろん石炭よりも大量の電力を生み出している。しかし、多くのLNG火力発電は、ガスが持つせっかくのエネルギーを無駄にしているともいえる。どういうことだろうか。

 最も単純な火力発電は、LNGなどの燃料を燃やしてボイラーで蒸気を作り、この蒸気で蒸気タービンを回転させている。発電機に回転力が伝わって電力が生まれる仕組みだ。これを汽力発電と呼ぶ。

 同じ量のガスを使うのなら、汽力発電より大量の電力を生み出す手法がある。2段構えで発電する「コンバインドサイクル」だ。燃料をガスタービン中で燃やすと、回転力が直接発電機に伝わる。この仕組みは航空機のジェットエンジンとほぼ同じだ。次に、ガスタービンからの高熱の排気を廃熱回収ボイラーに通じ、蒸気を生み出してさらに蒸気タービンを回す。1段から2段構えに変更すると出力が大幅に増すのだ。

関西電力は出力を大幅アップ

図1 姫路第二発電所の位置

 関西電力は兵庫県姫路市にある同社最大の火力発電所「姫路第二発電所」でこれまでLNGの汽力発電を利用してきた(図2)。姫路第二発電所には1号機から6号機まで25〜60万kWの発電装置が並び、合計出力は255万kWだった。

 これを全てコンバインドサイクルに置き換えると、出力は従来技術の最大出力と比較して約37万kW増の291.9万kW(48.65万kW×6)となる(図3)。効率(発電端効率、低位発熱量水準)で比較すると、従来の約42%から、約60%まで向上する。同社によれば世界最高水準だという。三菱重工(高砂製作所)が開発したJ形ガスタービンを採用することで実現した。ガスタービンの効率はタービン入口温度が高いほど高まる。J形ガスタービンは1600℃である。1600℃級MACC(More Advanced Combined Cycle)を実現したことになる。

 高効率であるため、出力1kW当たりの二酸化炭素排出量も0.470kg-CO2から0.327kg-CO2に減少する。よいことずくめだ。

 更新前の設備は1963〜1973年に順次運転を開始した旧型。既に1号機から3号機までの3機を2010年に停止しているため、従来の施設の出力は165万kWまで下がっていた。これを勘案すると、コンバインドサイクル化で出力が127万kW増加することになる。

 今後、2013年10月から2015年6月にかけて6機全てを順次コンバインドサイクルに更新して運転を開始する計画だ。既に、コンバインドサイクルに置き換えられた1号機は2012年11月に試運転を開始、2号機も2013年6月に試運転を開始した。

図2 汽力発電の仕組み。出典:関西電力
図3 コンバインドサイクルの仕組み。出典:関西電力

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