CIS太陽電池で最高効率、量産工場で14.6%の製造に成功自然エネルギー

Si(シリコン)を使わない太陽電池の代表例がCIS太陽電池だ。Si太陽電池よりも出力当たりの価格が低いが、変換効率の数値自体ではいくぶん見劣りしていた。ソーラーフロンティアは効率14.6%を達成したことで、数値上でも同レベルに到達したことをうたう。

» 2013年06月20日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 CIS太陽電池に取り組むソーラーフロンティアは2013年6月、変換効率14.6%の太陽電池モジュールの製造に成功したと発表した(図1)。出力は179.8Wだ。

 CIS太陽電池は、銅(Cu)とインジウム(In)、セレン(Se)の化合物からなる薄膜を発電に使う化合物太陽電池。太陽電池で一般的なシリコン(Si)は含まない。結晶Si太陽電池に比べて材料の使用量や製造時に必要なエネルギーが少ないことに加え、製造時の工程数も少なく、製造コストを抑えやすい特徴がある。その代わり、変換効率が多結晶Si太陽電池に比べるといくぶん低かった*1)

 今回の14.6%という数値は「現在主流となっている多結晶系シリコン太陽電池モジュールのエネルギー変換効率とほぼ同レベル」(ソーラーフロンティア)。

*1) ソーラーフロンティアは公称性能において同一の変換効率を示す結晶Si太陽電池とCIS太陽電池を比較した場合、年間積算発電量においてCIS太陽電池の方が8%多かったというデータを示している。

図1 変換効率14.6%を達成したCIS太陽電池モジュール。出典:ソーラーフロンティア

14.6%という数字の意味は?

 同社は2012年2月に30cm角のサブモジュールで17.8%という効率を発表、2013年1月には30cm角の基板から切り出した面積0.5cm2のセルで19.7%という効率を達成している。これらの数値と比べると14.6%は低い。14.6%という数値はどのような意味を持つのだろうか。

 「今回の成果は当社の国富工場の量産ラインで製造した太陽電池モジュールの値だ。太陽電池モジュールの変換効率は量産時にもばらつく。14.4%はその中でも最も高い値である」(ソーラーフロンティア)。つまり、研究室でのデータや、製品の小型版ではなく、一般に販売している面積約1.2m2の太陽電池モジュール、それも年生産能力が900MWに達する大型工場の量産ラインで製造されたものという意味がある。現時点では1枚だけの「チャンピオンデータ」とはいえ、量産化までに要する時間が短いことが予想できる。

 前例がある。同社は2012年2月に太陽電池モジュールで13.38%(出力164W)が達成できたことを明らかにしている。やはりチャンピオンデータだ。これが2013年1月には13.4%(出力165W)の太陽電池モジュール「SF165-S」の発売につながった。2013年夏には出力170Wの太陽電池モジュール「SF170-S」も発売予定だ。今回の製造技術を利用したモジュールは恐らく「SF180ーS」という製品として発売されるだろう。

 今回どのようにして変換効率を高めたのだろうか。ソーラーフロンティアは単一の技術導入による結果ではないとしている。製造装置のスムーズな運転や、セレン化硫化法適応時の温度条件、材料の細かい見直しなど、複数の製造条件の改善が主だという。

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