中国電力のメニュー 「基本料金が安くなるプラン」知らないと損する電気料金の仕組み(13)

今のところ西日本で値上げを実施しないのは沖縄を除いて中国電力だけだ。とは言っても、隣接する関西・四国・九州の単価と比べて、契約メニューによっては安くないものもある。割引プランでは基本料金を大幅に安くして、その代わりに電力量料金の単価を高くしたメニューに特徴がある。

» 2013年08月01日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 関西電力と九州電力が2013年5月から電気料金を値上げしたのに続いて、四国電力も近く値上げを実施する。周囲の電力会社をよそに、中国電力は値上げの意向を示していない。実は現行の料金がさほど安くないという事情がある。

 家庭・商店向けの標準プランである「従量電灯A」のモデル料金(月間使用量300kWh)を比べてみると、中国電力は7086円になり、値上げ後の九州電力の6808円よりも高い。安いのは小規模な工場・店舗向けの「低圧電力」と大規模ビル向けの「特別高圧」の2種類で、特別高圧の単価は北陸と中部に次いで全国で3番目の安さである(図1)。

図1 用途別の標準的なメニューと料金

工場向けは契約電力によって単価に違い

 中国電力の契約メニューは基本料金のバリエーションに特徴がある。企業向けのメニューの中では、工場を対象にした「高圧電力」に2種類のプランを用意している。契約電力が500kW未満と500kW以上で単価に大きな差を付けている。

 500kW未満を対象にした「高圧電力A」の基本料金の単価は、500kW以上の「高圧電力B」よりも1kWあたり467円も安い(図2)。その代わりに使用量に応じた電力量料金の単価が2円前後は高くなっている。高圧電力Aは使用量を少なく抑えないと割高になる体系だ。

図2 「高圧電力A」(500kW未満)と「高圧電力B」(500kW以上)の単価。出典:中国電力

 契約電力が500kW未満か以上かで単価を変えているのは、中国電力のほかには北陸電力と四国電力の2社だけである。この3地域で500kW未満の高圧電力を契約している利用者は、毎月の使用量を抑えるための対策が重要になる。

プランによって基本料金に2倍近い差

 基本料金の設定を大きく変えたプランは家庭向けのメニューにもある。オール電化の住宅を対象にした「ファミリータイム」と呼ぶメニューで、「プランI」と「プランII」の2種類がある(図3)。

 この2つのプランでは基本料金の最低額(10kVAまで)に2倍近い差があり、使用量の多い家庭はプランI、少ない家庭はプランIIを選ぶと割安になる。電力量料金の単価は時間帯によって変動するが、夜間を除けばプランIのほうが1kWhあたり3円前後も安くなる。

 ただし家庭向けの標準メニューである「従量電灯A」は基本料金がなく、電力量料金の単価は時間帯に関係なく設定しているため、ファミリータイムとの比較は難しい。夜間の使用量が多い家庭はプランI、逆に日中の使用量が少ない家庭はプランIIを選ぶと、従量電灯Aよりも安くなる可能性があることは確かだ。

図3 「ファミリータイム」の単価。出典:中国電力

家庭向けにピークシフトプランも

 ファミリータイムは夏季(7月〜9月)の日中(10時〜17時)の単価を高く、夜間の単価を安く設定していて、ピークシフトを促進するメニューでもある。このほかに家庭・商店向けに「電灯ピークシフトプラン」を提供している。

 基本料金はファミリータイムのプランIIと同じだが、日中の電力量料金に大きな差をつけた。夏季のピーク時間(13時〜16時)の単価がプランIIの1.5倍で、1kWhあたり54円にはね上がる(図4)。

図4 「電灯ピークシフトプラン」の単価。出典:中国電力

 ピーク時間を除くとプランIIと同程度の単価だが、オフピーク時間の使用量が90kWhを超えると年間を通してプランIIよりも高くなってしまう。あまりメリットが感じられない単価設定だ。

 他の電力会社にも同様のピークシフトプランがあるが、どれを見ても割安感がない。ピーク時間の単価が高いのは当然としても、それ以外の日中の単価をもっと安くしないと、利用者はついてこない。

連載(12):「関西電力のメニュー」

連載(14):「四国電力のメニュー」

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