9月から値上げする四国電力の電気料金は、西日本の各社と比較して家庭・商店向けの単価は低めだが、企業向けは高めだ。値上げに合わせて家庭・商店向けにはピークシフト型の新メニューを導入した。企業向けでは夏季の需給調整に対応した割引プランを提供する。
四国の新しい電気料金は企業向けの高圧と特別高圧の単価が西日本では沖縄と関西に次いで高くなる。高圧の標準メニューである「業務用電力」の場合、電力量料金の単価は17%程度の値上げ率になる(図1)。
家庭・商店向けで標準的な「従量電灯A」では、月間の使用量に応じて値上げ率が上がり、使用量が300kWhを超えると約10%も上昇する。企業も家庭も年間を通した電力使用量の削減と最適な契約メニューの選択が求められる状況だ。
値上げにあたって四国電力は家庭・商店向けに新メニューの「ピークシフト型時間帯別電灯」を開始する。夏季(7月〜9月)のピーク時間(13時〜16時)の単価を大幅に高くする代わりに、夜間(23時〜7時)の単価を1kWhあたり10.73円に引き下げる(図2)。
通常の従量電灯Aの1段目料金が19.45円であることから、夜間の単価は半分近くまで下がる。時間帯の長い昼間(7時〜23時)の単価は従量電灯Aよりも1円ちょっと高い。夏季のピーク時間に電力を使わず、年間を通して夜間の使用量が多い利用者にとっては、電気料金が安くなる可能性のあるメニューだ。
一方の企業向けの割引プランには新しいものはなく、他の電力会社が提供しているものと同様である。小規模の工場や店舗を対象にした低圧では、ピークシフト型に近い「低圧季節別時間帯別電力」を用意している。
このメニューは「夏季」と「その他季」で昼間(8時〜22時)の単価が変わり、夜間は季節に関係なく一律の単価になっている(図3)。標準メニューの「低圧電力」と比べると、基本料金が18%高く、夏季の昼間も7%高い。そのぶん昼間でも夏季以外は9%安く、さらに夜間は季節によって20〜27%も安くなる。
夏季の昼間の使用量さえ抑えることができれば、年間の電気料金を下げられる期待がある。特に夜間に大量の電力を使うような工場や店舗に適している。
電力使用量の多い高圧を利用する企業には、夏季の最大電力(デマンド)を前年よりも削減した場合の割引プランがある。高圧小口(契約電力500kW未満)では「夏季デマンド調整プラン」を適用すると、前年同月の最大電力を下回った分に対して割引がある(図4)。
規模が大きい高圧大口(契約電力500kW以上)や特別高圧になると、定常的な割引プランはない。ただし「夏季ウィークリー調整プラン」と呼ぶ制度があって、電力会社が最大電力の抑制を依頼した場合に割引が適用される。いわゆるデマンドレスポンス方式の割引である。抑制の対象になる週の平日に、昼間の最大電力が前年同月を下回ると割引を受けることができる。
こうした高圧向けの割引プランは、利用者側で最大電力をコントロールできないと実施することが難しい。BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入して、きめ細かく電力使用量を制御する必要がある。
連載(13):「中国電力のメニュー」
連載(15):「九州電力のメニュー」
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