九州電力のメニュー 「企業向けに多様なオプション」知らないと損する電気料金の仕組み(15)

5月に値上げした九州電力の単価は、それでも西日本の中では低い水準だ。家庭向けのほか、企業向けでも高圧の単価は西日本の5社で最も安い。時間帯や使用量に応じて単価を変えたオプションメニューも数多く用意していて、メニューの豊富さでは中部電力と双璧である。

» 2013年08月15日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 もともと九州電力の料金は西日本で最も安く、2013年5月に実施した値上げの額も関西電力などと比べて小幅だった。家庭・商店向けの標準メニューは値上げ後でも西日本で一番安い。ただし企業向けは安いメニューと高いメニューが混在している(企業向けは2013年4月から新料金を適用)。

 企業向けで他の地域よりも安いメニューは、一般のオフィスビルで利用する「高圧」である。基本料金は高いものの、電力量料金の単価は関西電力と比べて2円以上も安く、大量の電力を使う企業にとっては割安な体系になっている(図1)。全国でも北陸と中部に次いで3番目に安い単価である。大規模なオフィスビルや工場で使う「特別高圧」も同様で、西日本では中国電力の次に安い水準だ。

図1 用途別の標準的なメニューと料金

 ところが小規模な工場・店舗向けの「低圧電力」だけは高い。高圧と逆で基本料金が安い代わりに、電力量料金の単価は西日本で最も高く、全国でも東京電力に次いで2番目だ。西日本で一番安い中国電力と比べると2円前後も高くなっている。低圧電力の利用者は使用量を抑制する必要がある。

高圧のオプションは10種類を用意

 高圧であれば標準メニューの単価が安いうえに、オプションメニューも豊富にある。全部で10種類あって、時間帯や曜日などで単価を変えている。主なオプションメニューを比較してみよう。

 標準メニューの「業務用電力A」は他の地域と同様に夏季(7月〜9月)とその他季(10月〜6月)で単価を変えている。さらに平日と休日の単価を分けて設定したものが「業務用休日エコノミー電力A」である(図2)。休日(土曜日・日曜日・祭日など)の単価が2円以上安くなる代わりに、平日の単価が1円前後は高くなる。休日に営業する商業施設などに適したメニューだ。

 このほかに夏季のピーク時間(13時〜16時)と夜間(22時〜8時)の単価を大きく変えた「業務用季時別電力A」がある。夜間以外の時間帯は標準メニューの単価よりも高いので、深夜営業の業態でなければメリットは得にくいだろう。

図2 「業務用電力」の標準メニューと主なオプションメニューの単価。出典:九州電力

月間の使用量で選ぶプラン

 さらに高圧のメニューの中には、月間の使用量に合わせて選べるものがある。使用量が少ない施設に向けたメニューが「業務用電力A-I」である。標準メニューと比べると基本料金が安く、使用量に応じて課金する電力量料金の単価が高く設定されている(図3)。

 高圧(契約電力2000kW未満)だけを対象にしたメニューだが、基本料金は約3分の2で済む。電力量料金の単価は5円前後も高くなるので、月間の使用量が少ない利用者でなければ割高になってしまう。

図3 「業務用電力A-I」の単価。出典:九州電力

 逆に月間の使用量が多い施設を対象にしたメニューが「負荷率別契約」である。料金体系は少し複雑になっていて、契約電力1kWあたりの月間使用時間で単価が変わる設定だ(図4)。

 例えば契約電力が100kWで月間使用量が3万kWhだった場合には、1kWあたりの使用時間が300時間になり、100時間ごとに段階別の単価を適用する。電気機器の使用時間が長い工場などに適したメニューである。

図4 「負荷率別契約」の単価。出典:九州電力

連載(14):「四国電力のメニュー」

連載(16):「沖縄電力のメニュー」

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