国内で最大の地熱発電所を運営する九州電力が新たな設備の増強を進めている。鹿児島県の指宿市にある山川発電所では、小規模なバイナリー発電設備を使った実証実験を開始した。2年間かけて検証を進め、九州に数多くある離島などへの展開を目指す。
九州電力は大規模な地熱発電所を4か所で運営している。そのうちの3か所は大分県にあって、残る1つが鹿児島県の指宿市にある「山川発電所」である(図1)。
温泉で有名な指宿市は地熱資源が豊富で、山川発電所では地下2キロメートルの深さから取り出した高温の蒸気で30MW(メガワット)の電力を作り出すことができる。
この山川発電所の構内で新たに低温の地熱を利用したバイナリー発電設備の運転を開始した。バイナリー発電は水よりも沸点が低い媒体を使って蒸気を発生させ、発電用のタービンを回す方式である。加熱するプロセスと媒体で発電するプロセスの2系統に分かれることから「バイナリー発電」と呼ぶ(図2)。
山川発電所では地下から「蒸気井」を通じて上がってくる蒸気と熱水のうち、高温の蒸気だけを「気水分離器」で取り出して、30MWの大規模な発電設備で利用している。残った熱水は「還元井」で地下に戻していた。新たに導入したバイナリー発電設備では、この熱水から低温の蒸気を作り出して発電に利用する仕組みだ。
発電能力は250kWと小規模だが、設備自体も小さくて済むため、狭い場所でも設置することができる(図3)。
九州電力は地熱バイナリー発電の有効性を2年間かけて検証しながら、地熱資源の豊富な離島などに展開することを計画している。
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