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» 2013年08月14日 09時00分 UPDATE

再生可能エネルギーの現実(3):小水力発電の3つの課題−水利権、採算性、維持管理−

日本中に流れる川の水を有効に利用すれば、小水力発電の規模を飛躍的に拡大することができる。実際に各地域の自治体が導入プロジェクトを進めているが、期待ほどには設置件数が増えていない。維持管理に手間がかかるほか、天候によって水量が変動して採算性を見込みにくい点が課題だ。

[石田雅也,スマートジャパン]

連載第2回:「風力発電の3つの課題」

 小水力発電は他の再生可能エネルギーと比べて、設備に必要なスペースが小さくて済む利点がある。横幅が1メートルしかない水路に発電設備を取り付けることも可能だ。小水力発電の対象になる場所は日本全国に膨大にあって、例えば東京都の江東区は公園の中を流れる水路で可能性を検証している。

 環境省が地域別の中小水力発電(出力3万kW未満)の導入可能性を調べたところ、全国で合計2万カ所以上にのぼる設置対象地点を特定できた(図1)。ところが実際に発電設備を導入した件数は最近でもほとんど増えていない。

 2012年7月に始まった固定価格買取制度では、太陽光発電を中心に8カ月間で38万件以上の設備が認定を受けた。しかし中小水力発電は38件しかなく、そのうち小規模な200kW未満の発電設備でも25件にとどまっている。

shosuiryoku_potential.jpg 図1 地域別に見た中小水力発電の導入可能地点数。出典:環境省

 再生可能エネルギーの中では最も導入しやすいはずの小水力発電だが、それでも設置までにさまざまな手続きが必要なうえに、事業規模が小さい割には維持管理に手間がかかる。農業用水路などを活用した小水力発電を検討してみたものの、採算性が見込めずに断念する事業者は少なくないのが現状だ。

河川にも用水路にも「水利権」の制約

 太陽光発電の場合には農地法の制約によって土地を利用できない問題があったが、小水力発電にも同様に「河川法」の制約がある。大きな河川だけではなくて、河川から取水する農業用水や工業用水も規制の対象になる。流れる水を利用するための許可(「水利権」と呼ぶ)を得なくてはならない(図2)。

suiriken.jpg 図2 小水力発電に必要な水利使用許可。出典:国土交通省

 小水力発電を実施する場合も例外ではなく、国や自治体から水利権を取得することが前提になる。ただし自治体が運営する浄水場や下水処理場などには水利権の問題は発生しない。こうした点で自治体みずからが小水力発電を実施する場合は有利と言える。

 ようやく2013年4月になって河川法が改正されて、出力が1000kW未満の小水力発電に対しては認可の手続きが大幅に簡素化された。一般の事業者でも小水力発電を導入しやすい環境が整ってきたわけだ。

発電コストは風力より高く、太陽光より低い

 残る課題は採算性と維持管理の2つである。水力による発電能力は「水量」と「落差」で決まる。小水力発電の対象になる農業用水などでは、水量はさほど多くなく、水流の落差も小さい。そのために発電能力は200kW未満のものが多いが、水流が安定していれば年間の発電量は太陽光や風力よりも大きくなる。

 発電能力に対する実際の発電量(設備利用率)を比較すると、太陽光は12%、風力は20〜30%が標準的であるのに対して、小水力は平均して60%程度になる。同じ発電能力であれば、小水力の発電量は太陽光の5倍、風力と比べても2〜3倍も多い。

 ただし発電能力の割に設備費と維持管理費が大きいのが難点だ。1kWhの電力を発電するのに必要なコストを比べると、陸上風力や地熱よりは高く、洋上風力と同程度で、バイオマスや太陽光(住宅用)よりは低い(図3)。再生可能エネルギーの中では平均的な水準だ。

power_cost.jpg 図3 電源の種類別の発電コスト。出典:コスト等検証委員会

 ここで問題になるのは、発電量に影響する水量の変動である。雨が少ない季節には河川の水量が少なくなるため、発電量も減ってしまう。そうした変動分を織り込んで年間の発電量の割合を60%程度と見込んでいるが、最近の気候変動によって降水量が従来とは違ってきている。

 小水力発電の設備は稼働年数を40年に設定して採算性を判断するのが通常だが、今後40年間の水量の変化を現時点で予測することは難しい。水量が増えれば問題ないが、水量が減った場合には売電による収入も減少してしまう。

1日2回の清掃作業が必要に

 もうひとつの課題である維持管理については、長年にわたって要員を確保できるかが重要になる。小水力発電は意外に維持管理に手間がかかる。水路を流れてくる木の枝や枯葉、もろもろのゴミが発電設備に溜まってしまうためだ。

 小水力発電の導入量が全国で最も多い長野県がモデルケースを示している。県内を流れる馬曲川(まぐせがわ)から取水した水流を活用した発電能力95kWの「馬曲川水力発電所」で実施している維持管理作業の例である(図4)。それを見ると、ゴミの除去や発電機の稼働確認を1日に2回のほか、季節ごとに必要なメンテナンス作業がいくつかある。

maintenance_nagano.jpg 図4 小水力発電に必要な維持管理作業(馬曲川水力発電所の例)。出典:長野県環境部

 馬曲川水力発電所の場合には、近くの温泉設備の監視員が兼務で維持管理を担当している。こうした要員の確保が小水力発電を長年にわたって安定稼働させるためには不可欠である。定期的な清掃を怠ると、発電設備にゴミが溜まって故障する可能性が大きくなり、結果として売電収入を減らしてしまうことになる。

第4回:「地熱発電の3つの課題」

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