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» 2013年08月23日 15時00分 UPDATE

キーワード解説:再生可能エネルギーを促進する「固定価格買取制度」

2012年7月に固定価格買取制度が始まって以降、再生可能エネルギーの拡大が続いている。従来の原子力を中心に据えた中央集権型のエネルギー供給から、国民や企業を主体にした自立分散型へ移行する意義は大きい。新たに法律によって定めた制度で、当然さまざまな要件や制約がある。

[石田雅也,スマートジャパン]

 実は「固定価格買取制度」は正式な名称ではなくて通称だ。正確には「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」という長い名称の法律によって定められた制度を指している。

 電気事業者とは主に電力会社のことで、一般の家庭や企業などが再生可能エネルギーで発電した電力を事業者が買い取ることを義務づけたものである。事業者の観点からは「買取」だが、売る立場から見ると「売電」になる。

「設備認定」を受けることが基本条件

 固定価格買取制度によって新たな電力の売買契約が全国各地で生まれている。ただし実際に契約を結んで売買を始めるためには、数多くのステップを踏む必要がある(図1)。家庭や企業に設置した発電設備から電力会社の送配電ネットワークに電力を供給することになるわけで、安全性を含めて確認作業が必要になるのは当然である。

kaitori_enecho_sj.jpg 図1 固定価格買取制度の適用プロセス。出典:資源エネルギー庁

 この一連のプロセスを理解しておくことが、固定価格買取制度を有効に活用するための基本になる。中でも特に重要なのは「設備認定」である。家庭でも企業でも、発電設備を計画した後に国から認定を受けなくてはならない。

 その次に、電力会社などの電気事業者とのあいだで電力の供給契約を結ぶ。契約は2種類あって、電力を売買するための「特定契約」のほかに、発電設備を送配電ネットワークにつなぐための「接続契約」が必要になる。

 以上の手続きが完了してから、発電設備の建設を進める。工事が終わって運転を開始できた時点から電力の供給が始まる。ここからが「買取期間」になる。固定価格買取制度では再生可能エネルギーの種類に応じて10〜20年の長期間にわたって買取が保証される。しかも買取価格は最初に適用した金額をそのまま最後まで継続して適用する。この点が「固定価格」と呼ぶ理由である。

買取価格は下がっていくことを想定

 そこでよく問題になるのが、どの時点で買取価格が決まるかである。というのも、買取価格は毎年度に見直すことになっていて、実際に太陽光発電の買取価格は2013年度に1割ほど引き下げられた。売電する側にとっては、引き下げの前と後では10年間あるいは20年間の総収入が1割も違ってしまう。見過ごすことのできない重要な問題である。

 買取価格は電力の供給を開始した時点ではなく、それよりも前に確定する。国から設備認定を受けた時点、あるいは電力会社などに接続を申し込んだ時点、のいずれか遅いほうになる。例えば設備認定と接続申し込みを2012年度のうちに完了すれば、運転開始が2013年度や2014年度に入ってからでも、買取価格は2012年度のものを適用することができる。

 買取価格は再生可能エネルギーの種類ごとに発電設備のコストなどをもとに国が決めることになっている。通常は年度を経過するごとにコストが下がり、買取価格も安くなっていく。年度が切り替わる前の高い買取価格の適用を受けて、その後に安くなったコストで建設すれば、売電の利益が大きくなるわけだ。

 こうした事情もあって、設備認定を受けながらも運転開始に至っていないケースが急増してしまった。資源エネルギー庁が2013年5月末における発電設備の導入状況を公表している。それを見ると、太陽光から地熱までの合計で2237万kWの設備が認定を受けたものの、実際に5月末までに運転を開始したのは336万kWしかない(図2)。

setsubi_enecho_sj.jpg 図2 再生可能エネルギー発電設備の導入状況(2013年5月末)。出典:資源エネルギー庁

 設備認定から運転開始までには建設期間があり、大規模な設備であれば1年以上かかる。両者の数字にギャップがあるのは当然である。ただし一部には、建設を遅らせてコストが低下するのを待ってから工事を開始するケースも考えられる。このような事例が増えると固定価格買取制度の仕組みがゆがんでしまうため、資源エネルギー庁は実態の調査に乗り出している。

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