街ごとエネルギーゼロ、パナホームが芦屋と草津で実現スマートハウス(1/2 ページ)

パナホームは2018年までに戸建住宅が消費するエネルギーよりも作り出すエネルギーの方が多くなるようにする。いわゆるネットゼロエネルギーの考え方だ。これに先駆けて、兵庫県芦屋市と滋賀県草津市で目標を先取りする住宅街の販売を開始した。

» 2013年09月04日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 ネットゼロエネルギーハウス(ZEH)は経済産業省や環境省、国土交通省が共通に掲げる政策だ。2020年までに標準的な新築住宅が満たすべき指針である。宅内での一次エネルギーの消費量を正味(ネット)でゼロにすることが目的だ。

 住宅各社はZEHを実現すべく、必要な技術を一部取り込んだ製品を開発、販売している。パナホームは2つの目標を掲げたスマート&エナジー戦略をうたう。戦略にある第1の目標は政策よりも2年早い2018年に戸建住宅製品を全てZEH化することだ。第2は、災害時(停電時)に系統電力に頼らずとも暮らしを維持できるエネルギー自立の実現だ。

 2つの目標に必要な技術は一部共通するが異なる所もある。ZEH化には、住宅が消費するエネルギーが少なくて済むような断熱構造の他、太陽光発電で電力を作り出す必要がある。災害時に備えるためには太陽光発電と蓄電池の組み合わせが有効だ。どちらもエネルギー制御システムが必要であり、パナホームはクラウド対応のシステムを利用する。

兵庫県では大規模住宅の組み合わせで実現

 パナホームは2013年9月、兵庫県芦屋市と滋賀県草津市でネットゼロエネルギーを実現する街の販売を開始する。「街」で実現するところが、個別のZEHよりも進んでいる。エネルギーを創り出しやすいタイプの住宅とそうでない住宅を組み合わせることで、街区全体の正味の一次エネルギー消費量をゼロにするという考え方だ。

図1 パナホーム スマートシティ潮芦屋の全体完成予想図。出典:パナホーム

 兵庫県芦屋市の取り組みは息が長い。同社は大阪湾に面した埋め立て地を広域開発しており、分譲住宅団地全体を「パナホーム スマートシティ潮芦屋」と呼んでいる(図1)*1)。2012年7月から一部の街区の分譲を開始し、全街区が完成するのは2019年だ。400戸の戸建住宅と集合住宅(マンション)からなる。今回、販売を開始したのはマンション部分の「パークナード潮芦屋」(83戸)だ(図2)。

*1) パナホーム スマートシティ潮芦屋には、管理組合の拠点や2次避難所として使うことができるコミュニティセンターが設けられている。出力約18kWの太陽光発電システムと、パナソニックの創蓄連携システム(蓄電池を使った電力管理システム)を取り入れることで、停電時にも電力の自立が可能だいう。

図2 パークナード潮芦屋の完成予想図。地上5階建。2014年3月に入居を開始する予定だ。出典:パナホーム

 同社は2つの日本初をうたう。まず、戸建住宅部分とマンション部分を合わせた街全体でネットゼロエネルギーを実現したことだ。戸建住宅は太陽光発電システムを載せる屋根を各戸で用意できるため、1戸当たりの発電量が多い。このため、戸建住宅部分のエネルギー収支は100%を超えている。これをマンション部分と合わせて、街全体でゼロにする(図3)。

図3 ネットゼロエネルギーの内訳。出典:パナホーム

 マンション部分でも電力を作り出す。全83戸にエネファーム(燃料電池システム)を取り付ける。これが同社のいう2つ目の日本初だ。さらに屋上部分にパナソニックのHIT太陽電池モジュールを56kW設置する。2種類の装置でマンションの年間消費電力量197MWhに対して、199MWhを発電。電力を全てカバーして多少余る計算だ*2)。なお、太陽電池モジュールが生み出す電力は199MWhのうち、61MWhを占める。約3分の1だ。

*2) 経済的な優位性も大きいという。エネファームの経済性と通常時の太陽光発電の売電収入により、電気とガスを併用した一般的なマンションと比べて、光熱費が年間で1戸当たり約6万円安くなるという。

 冒頭でパナホームのスマート&エナジー戦略を紹介した。2番目の目標は災害対策だった。パークナード潮芦屋では、屋上に設置した太陽電池モジュールを災害時には自立運転に切り替え、蓄電池の容量15kWhのうち、11kWh分と組み合わせる。これにより、揚水ポンプと夜間の共用部照明の電力をまかなうことができ、明かりと各戸の水道使用を可能にしている。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.