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» 2013年09月13日 09時00分 UPDATE

スマートハウス:全ての住戸に「蓄電池」を、川崎市に建つ高層マンションの工夫とは (1/2)

三井不動産レジデンシャルは、住戸と共用部の電力に工夫を凝らした新築マンションを開発中だ。制御では日立製作所と、リチウムイオン蓄電池では日立マクセルと協力し、高度なMEMS対応マンションを実現しようとしている。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電力料金を抑えることができ、停電時にもある程度の電力が保証される集合住宅(マンション)。エネルギー上、自立したこのようなマンションを各社が目指している。理想に向かう道筋はさまざまだ。例えば、パナホームは戸建住宅とマンションを組み合わせた街全体でのエネルギー収支改善を進めている(関連記事)。グランディアは全戸に太陽電池を接続することで、世帯ごとのエネルギー管理の工夫の余地を広げた(関連記事)。

 三井不動産レジデンシャルの「パークタワー新川崎」(川崎市幸区、670戸)は、リチウムイオン蓄電池とHEMS(家庭用エネルギー管理システム)、MEMS(マンション用エネルギー管理システム)を重視したマンションだ(図1)。省エネだけではない、生活に密着した付加価値をうたう。他の「スマートマンション」と比較すると、省エネ、蓄エネ、創エネという3本柱のうち、省エネと蓄エネに力を入れた形だ。安価な電力を蓄えて使い、ピークシフトや停電にも強い。

 省エネでは日立製作所が、蓄エネでは日立マクセルが協力する。2015年3月に入居を開始し、その後、省エネ・蓄エネを実現するHEMSやMEMSの運用を開始する予定だ。

yh20130913Hitachi_building_530px.jpg 図1 パークタワー新川崎。JR新川崎駅とJR鹿島田駅に直結されている。敷地面積6131.20m2。地上47階地下2階。出典:三井不動産レジデンシャル

 3社によれば、マンション全戸にMEMSやHEMSと連携した蓄電池を設置したマンションは日本初だという*1)。日立マクセルによれば同マンションにはもう1つの記録がある。世界最小最軽量をうたう蓄電システム「Energy Station Type C」だ(図2)。幅650mm、高さ130mm、奥行き380mmであり、重量は約24kgだ。

*1) HEMSと蓄電池のいずれもが家電向け通信プロトコルECHONET Liteで接続可能なものという条件がある。

yh20130913Hitachi_battery_995px.jpg 図2 HEMS対応リチウムイオン蓄電システム「Energy Station Type C」。出典:日立製作所

蓄電池の何が難しいのか

 家庭向けの蓄電池は各社が製品化しており、蓄電池と太陽光を組み合わせたサービスもある(関連記事)。スマートホンに内蔵する電池であれば世界最小最軽量は歓迎されるだろうが、家庭向けで実現した狙いが分かりにくい。

 約1年間の共同開発の間、三井不動産レジデンシャルの日立マクセルに対する要求は厳しかったようだ。蓄電池に関する要求は3つあった。第1が空間設計だ。マンションでは戸建て住宅とは異なり、屋外設置の蓄電池を選択しにくい。室内、それも専用スペース以外に設置できる蓄電池が望まれている。

 このため、小型の電池パックと小型のインバーターを組み合わせて、装置体積1L当たりのエネルギー密度を43.6Whにまで高めた。これは従来の日立マクセルの製品と比較して3.2倍の密度だ。小さく薄くして、冷蔵庫などの上に設置できるように、という狙いがある。

 第2がユーザーインタフェースだ。夜間充電を行う経済モード、常時ほぼ満充電を維持する防災モード、充放電容量と充放電時間をユーザーが決めるユーザーモードの3種類の動作モードを用意した。なお、蓄電池が空の状態から満充電まで6時間必要だ。繰り返し充放電回数は4000回程度である。1日1回空の状態から満充電にして放電する使い方だと約10年に相当する。

 第3が静音レベルだ。第1の要求と併せて、静音設計に特に注力した。今回の蓄電池では音圧レベルを37dBA*2)以下に抑えた。

*2) 騒音の単位としてはdB(デシベル)がよく用いられている。例えば40dBは図書館や静かな住宅街の昼、深夜の市内で聴こえる騒音という具合だ。デジベルは本来、音圧の値であり、周波数による人の耳の感じ方は考慮していない。人の耳にどう聞こえるかという補正後の値(騒音レベル)をdBAで表す。

 蓄電池の電池パック自体は音を発しない。装置が発する熱を取り除くファンが音を出す。そこで、3つの技術的な改善を加えた。「第1が電池から取り出した直流を交流に変換するインバーターの変換効率を高めたことだ。これで変換ロスによる発熱が減る。第2に静音冷却ファンなどの構造を改善した。冷却効果を狙ってファンを大口径化し、大口径化によって風を狙った所に送りにくくなるという課題を、電池内部の構造を工夫して流路を確保することで解決した。第3はファンの回転数の制御だ。回転数をモニターしてなるべくゆっくりと回るようにして、無駄な音を出さない」(日立マクセル)。

 Energy Station Type Cはマンション用に最適化設計した蓄電池だ。2014年春からは一般のマンション向けにも販売を開始する。「今後はEnergy Stationのラインアップを拡充していく、戸建て住宅用の製品、法人向けの製品を念頭に置いている」(同社)。

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