もっとスマートに節電しよう!(5)代替エネルギーを導入電気料金を安くする5つのステップ

電力会社から購入する量を減らせば電気料金は確実に安くなる。そこで注目を集めているのが電気の代わりにガスを使うことだ。ガス料金はかかるが、電気よりも安く済む場合が多い。火力発電所で電力を作るよりもエネルギーの変換効率が高く、そのぶんコストが低くなるためである。

» 2013年10月03日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第1回:「空調と照明に絞る」

第2回:「機器を買い替える」

第3回:「システムで自動化する」

第4回:「契約を見直す」

 政府が夏や冬の節電対策として、企業や家庭でガスの利用を促進している。電力との大きな違いは、利用者の施設にガスを引き込んで電力や熱を作ることができるために、エネルギーの無駄が格段に少なくなる点にある。

 特に電力と熱の両方を供給できる「ガスコージェネレーション」は、同じ量のガスから約2倍のエネルギーを生み出す。ガスを燃焼させて電力を作る一方、その廃熱を利用して冷暖房や給湯が可能なシステムになっている(図1)。

図1 ガスコージェネレーションの種類と用途。出典:日本ガス協会

 利用者から見ると、通常の電力よりも安いコストで必要なエネルギーを調達できるようになる。節電対策に加えてコスト削減、さらには災害対策も兼ねて、発電や冷暖房などの用途にガスを導入する企業や自治体が増えている。

ガスの単価は冬よりも夏のほうが安い

 ガスを使った冷暖房システムに切り替えると、夏の昼間の電力需要を大幅に抑えることができる(図2)。地域の電力不足を回避することに貢献できるうえに、電力会社と時間帯別の契約を結んでも単価の高い昼間の電力を使わずに済む。

図2 ガス冷暖房による電力のピークカット効果。出典:大阪ガス

 もちろんガス料金はかかるが、電気料金よりも割安な単価設定になっていて、最適なメニューを選べば電気+ガスの光熱費全体を削減することが可能だ。例えば東京ガスの企業向け(業務用・工業用)の契約メニューを見ると主なものだけで4種類あり、いずれも「冬期」と「その他期」で単価が分かれている。

 ガス冷暖房の利用者向けには、夏を含む「その他期」の単価を冬期よりも安くしたメニューがある(図3)。夏に高くなる電気料金と逆の単価設定になっている。しかも冬期の単価は標準メニューと変わらないので、暖房を多く使っても割高になることはない。

図3 ガス料金のメニュー例(業務用・工業用、東京地区)。出典:東京ガス

 季節によって使用量が変動する冷暖房にガスを使って、それ以外の使用量が安定している照明などには電気を使い続ける。この組み合わせで電気+ガス料金を最小限に抑えるメニューを選択すれば、光熱費の総額を削減できる可能性が大きい。

 最近10年ほどでLNG(液化天然ガス)の輸入価格は2倍近い水準まで高くなったが、ガス料金はほとんど上がっていない(図4)。ガス会社は同じ地域で数多くの事業者が自由競争の状態にあり、さらに電力会社とも競争しなくてはならない。安い水準の料金を維持することが自由競争に勝ち抜くうえで不可欠になっている。

図4 ガスの平均販売価格とLNG輸入価格の推移。出典:資源エネルギー庁

太陽光と組み合わせてガス料金も削減

 ガスを全面的に導入した最近の事例には、イオンが2013年5月に大阪市で開業した新しいショッピングモールがある(図5)。屋上に設置した大型のガスコージェネレーションから1630kWの電力を供給して、ショッピングモール全体で使用する電力の約3分の1をまかなっている。

 さらにコージェネで発生する熱を冷暖房システムに利用する。電力と熱の両方を合わせるとエネルギーの変換効率は75%になり、通常のガス火力発電所の40%程度と比べて2倍近い高さになる。光熱費を抑えるのと同時にCO2排出量も4割くらい減らすことができる。

図5 ガスコージェネの導入例(イオンモール大阪ドームシティ)。出典:イオン、大阪ガス

 このビルでは太陽光発電システムも併用する。晴天の昼間には太陽光で発電した電力を優先的に使い、それ以外の時にガスを使う。天候に関係なく安定して電力を供給することができて、ガスの使用量も少なくて済む。

 再生可能エネルギーとガスの組み合わせは、今後の安くて安定したエネルギー調達方法の主流になっていくだろう。たとえ停電になっても電力を継続して使うことができるため、災害対策の面でも効果的だ。電気料金の削減と合わせてBCP(事業継続計画)の観点からも導入を検討したい。

(連載終了)

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