冬の予備率も3.0%で予測、利用者を惑わす関西電力と九州電力電力供給サービス

政府の委員会が電力会社からの報告をもとに今冬の需給見通しをまとめた。相変わらず問題の多い報告内容で、関西と九州は1月と2月の予備率をピッタリ3.0%に合わせて提出した。毎冬に電力不足が心配される北海道では、最低でも予備率は6.9%に収まる見通しだ。

» 2013年10月04日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 毎年度の夏と冬を前に、政府が主宰する「電力需給検証小委員会」が電力会社ごとの需給見通しをまとめて、節電対策の方針を検討することになっている。10月1日に発表した2013年度冬季の見通しは、またしてもずさんな内容が随所に見られる。

 特にひどい点は、関西電力と九州電力が1月と2月の予備率(需要に対する供給力の余裕)を停電の可能性がある3.0%に統一して出したことだ(図1)。関西電力は今夏の見通しにおいても7月〜9月の予備率をすべて3.0%で予測している。実態に合わない予測値で、節電に取り組む利用者を愚弄するような姿勢をとり続けている。

図1 2013年度冬季の電力需給の見通し(画像をクリックすると拡大)。出典:電力需給検証小委員会

 委員会がまとめた需給見通しのベースになるのは、1日のうちで電力の使用量がピークになる「最大電力需要」である。この数値よりも電力会社の「供給力」が上回れば電力は足りることになるが、需要は常に最大3%程度の変動が生じる可能性があるため、供給力には3%以上の余裕が求められる。

 この余裕を表す指標が「予備率」で、3%を切ってしまうと停電の可能性がある。関西電力と九州電力が予測した予備率3.0%は、まさに危険な状況を示す限界値に合わせたものだ。その背景には、原子力発電所を再稼働させないと電力不足の心配から逃れられないことを示唆する狙いが露骨に見える。

節電効果は2012年度の8割に抑えて計算

 2013年度の冬季の最大電力需要は、東日本大震災の直前の2010年度の実績をもとに、気温・経済・節電の3つの影響を加味して算出した(図2)。気温は厳寒を想定し、経済は地域にもよるが全般的には拡大する前提である。節電の効果は2012年度の実績の8割に抑えるなど、かなり保守的な予測方法をとっている。

図2 2013年度冬季の最大電力需要の予測(画像をクリックすると拡大)。出典:電力需給検証小委員会

 委員会では2013年度の夏季にも同様の予測方法を採用したものの、実際には節電の効果は2012年度の実績と同水準で、8割に抑える必要はなかったことが明らかになっている。このため冬季の節電効果も2012年度の実績と同水準にした場合の最大電力需要を参考値として算出した。その結果、全国平均で予備率は0.8ポイントほど改善する。

 冬季の電力不足が心配される北海道を例にとると、予備率は2月に最低の6.9%になる予測になっているが、節電効果を2012年度と同水準にすると8.1%まで上昇する。十分な余裕を見込める状況になり、家庭と企業が前年度と同様の節電対策を実施すれば、需給に問題が生じる可能性はほとんどないと言える。

 この点でも関西電力と九州電力は非現実的な予測値を出した。節電効果の見込みを変えて最大需要電力が減少するにもかかわらず、それに伴って供給力まで減らして予備率を3.0%のまま維持している。どのような状況でも予備率の予測を変えるつもりはないようだ。

 せめて政府の委員会には最低限のチェック機能を望みたいところだが、それさえも期待できない状態になっている。

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