最大23%のピークカット、横浜市のビル14棟でデマンドレスポンススマートシティ

横浜市が2010年度から取り組んでいる「横浜スマートシティプロジェクト」の中で、大規模なビルを連携させたデマンドレスポンスの成果が上がっている。7月〜9月に14棟のビルで実施した結果、最大23%のピークカットを達成した。インセンティブの価格差による効果も明らかになった。

» 2013年10月29日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 横浜市が取り組んでいるデマンドレスポンスは、対象のビルに設置したBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を連携させた本格的な取り組みである(図1)。2013年に入って冬の1月〜2月に6棟のビルで実施したのが最初で、さらに夏の7月〜9月の2カ月にわたって14カ所のビルに拡大した。

図1 「横浜スマートシティプロジェクト」の全体像。出典:横浜市温暖化対策統括本部

 夏の場合は前日の時点で予想最高気温が30度以上の22日間を対象にした。地域全体の電力需給状況を管理するCEMS(地域エネルギー管理システム)が節電依頼を発行すると、各ビルにあるBEMSに対して電力の削減量の指示が届く仕組みだ(図2)。その指示をもとにビル単位で節電対策を強化して、電力需要がピークになる13時〜16時の使用量を抑制する。

図2 デマンドレスポンス(DR)のプロセス。2013年度の夏季は14棟のビルで実施。出典:横浜市温暖化対策統括本部

 今夏の実験では、節電の依頼に応じて電力の使用量を削減した場合のインセンティブを変動させて効果を比較した。1kWhあたり5円、15円、50円の3段階である。インセンティブを15円にした場合には、削減率が最大22.8%に達する日があった(図3)。22日間の平均でも12.2%の削減率になった。

図3 インセンティブ価格別の電力削減率。デマンドレスポンスの対象・非対象のビルで比較。出典:横浜市温暖化対策統括本部

 1kWhあたり15円は企業向けの電力の標準的な単価とほぼ同等である。削減した電力と同じ量の電気料金が無料になる設定だ。インセンティブを5円にすると、削減率が最大になった日でも6.6%の効果しかなく、対価による差が明確になった。

 横浜市は冬に実施した1回目では特定地域の商業ビルだけを対象にしていた。2回目の夏は地域を広げたうえで工場やマンションも対象に加えて、より広範囲にデマンドレスポンスを実施した場合の効果を測定した。対象のビルに対してデマンドレスポンスの指示をランダムに発行することによって、節電の依頼を受けたビルと受けなかったビルの差をもとに電力の削減率を算出する。1回目の冬は最大で22.0%の削減率だった。

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