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» 2013年11月22日 09時00分 UPDATE

自然エネルギー:「海上」や「線路」を目指す太陽光――12の実証事業が始まる (1/2)

太陽光発電以外に利用しにくい「土地」がまだまだ残っているのではないだろうか。建物の壁面や農業との共存、傾斜地、水面、河川敷、鉄道の線路、集合住宅のベランダ……。だが、このような土地に設置するノウハウがない。適した機材も十分にはそろっていない。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は導入の阻害要因を取り除くために、12のプロジェクトを立ち上げた。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 長期的に見て、太陽電池の設置に最も適した場所はどこだろうか。3つだけ条件を挙げるとすればこうだろう。十分な日射が得られること、他の用途に使いにくいこと、発電した電力を地産地消できることだ。

 住宅の屋根はこの3条件に当てはまる。メガソーラー建設が広がるまで、国内ではほとんどの太陽電池が住宅の屋根に設置されてきた理由だ。他に適した場所が残ってはいないだろうか。これが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が開始した「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」の問題意識だ。

 NEDOのプロジェクトにはもう1つ条件がある。あまりにもニッチな用途は狙わない。将来の設置容量(導入ポテンシャル)が期待できる用途を開拓する。2013年11月にNEDOが採択を発表したプロジェクトは12に及ぶ。共同研究先は14法人だ。導入ポテンシャルが大きいにもかかわらず導入が進んでいない場所として、建物の壁面(1件)、農業関連(4件)、傾斜地(2件)、水上(2件)、その他(3件)のプロジェクトを選び出した。

農業関連を重視した

 12のプロジェクトを順に紹介する。カネカの「低反射環境配慮型壁面太陽光発電システムの開発」は、太陽電池の出力改善を目指したものではない。「壁面への取り付け施工と、まぶしさを防ぐこと(防眩)が目的だ」(NEDO)。ビルに太陽電池を設置する場合、屋根の面積よりも壁の面積の方が大きい。設置角度を考慮しても壁面の方が出力が大きくなるだろう。しかし、垂直な壁面に太陽電池を設置する技術はまだ確立されていない。加えて、太陽電池は太陽光を多少反射する。「まぶしいビル」が林立しては周辺住宅の住民の迷惑となってしまう。

 図1に示したダイキン工業のプロジェクト「低コスト太陽光追尾システムの農地での有効性実証」は、農地とビニールハウスを対象とする。「太陽光発電システムのうち、架台に相当する部分の機器設計と施工に独自性がある」(NEDO)。プロジェクトの目的は発電量向上と強風対策だ。発電量向上のために、空気圧駆動式太陽光追尾装置を設置する(図1右)。独自設計により低コスト化できるとした。屋外では空気圧アクチュエータのダンパー機構を使って強風を受け流す機能を追加する(図1左)。

yh20131121NEDO_Daikin_590px.jpg 図1 農業と太陽電池を組み合わせる2つの手法。出典:NEDO

 オルテナジーと旭硝子が共同して取り組む「強度の弱い畜舎向け軽量発電システム」は、文字通り本来重量物を追加することを考えて設計されていない畜舎への太陽電池導入を狙ったプロジェクトだ。畜舎の屋根面を加工せずに設置できる軽量な架台と軽量な太陽電池モジュールの2つを開発する。畜舎に利用するため、家畜のふんから発生するアンモニアガスに耐える性能をどちらにも持たせる。

 ユニバーサリー電工の「太陽電池屋根設置型ビニールハウス植物工場化プロジェクト」には2つ目的がある。1つはビニールハウスという特別な建物に対応した設置方法の開発だ。ビニールハウスのビニールは1年に1回程度張り替える必要がある。張り替えるたびに太陽電池を取り外して再度設置していては手間が掛かるばかりだ。そこでビニールハウスの骨組みと太陽電池モジュールのフレームの関係を見直して、取り外す必要がなく、発電量を損なわない設置方法を探る。同社はビニールハウスの温度管理に役立つ開閉機を製品化しているため、ビニールハウス内の湿度制御装置を付加機能として開発する。

 伊藤電工の「簡易的太陽追尾型太陽光発電システムの営農型発電設備への応用開発」では、いわゆるソーラーシェアリングに関する技術を開発する。ソーラーシェアリングとは営農を続けながら上部に発電設備を設置して、農作物と電力の両方を得るもの。同社は架台部分を開発する。営農のために全ての光を利用することはできないため、発電量向上を図る必要がある。低コストな2軸追尾システムを開発することで実現する。

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