「海上」や「線路」を目指す太陽光――12の実証事業が始まる自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2013年11月22日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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傾斜地と水上は設置が難しい

 傾斜地向けのプロジェクトは2つある。それぞれ対象とする土地の面積が異なる。

 大面積の土地に向けたプロジェクトは「傾斜地用太陽光発電システムの実証」。NTTファシリティーズとアドテック富士が共同で実施する。杭や架台の配置を最小限にすることで傾斜地に対応する。「ある程度整地された土地を対象とし、アジャスター付き架台に太陽電池モジュールを半自動で施工する自動装置を開発する」(NEDO)。傾斜地であるため、重機を導入せず軽作業で実現できる装置の開発が目的だ。

 中小規模の土地に向けたプロジェクトが「傾斜地における太陽光発電装置のための小径鋼管杭工法の開発・実証」。奥地建設が実施する。「コンクリート基礎を使わず、ある程度荒れた土地でも施工できるようにする」(NEDO)。架台をユニット化して半完成状態で出荷し、現場で取り付ける形だ。傾斜地でも低コストで発電所を立ち上げることが目的だ。

 水上設置を目的としたプロジェクトは、1つが淡水面、もう1つが海水面を対象とする。コアテックの「未利用水面を活用した浮体モジュールの開発及び導入実証」は、水面に設置するシステムのコストアップ要因をなくすことが目的だ。既に広まっている水面設置では、住宅の屋根などに設置しているものと基本的には同じ太陽電池モジュールを使っている。これに浮体を後付けしている(関連記事)。「コアテックの目的はモジュールと浮体を最初から一体化することだ。これによって、低コスト化でき、軽量化も進むだろう」(NEDO)。一体化する際のカギは耐候性だ。

 海水面を対象とするプロジェクトは、シリコンプラスによる「海上・離島沿岸部太陽光発電プロジェクト」(図2)。離島の灯台などに設置した事例を除くと、海水に直接触れるような太陽光発電システムのノウハウは国内ではほとんど得られていない。同社のプロジェクトは意欲的だといえるだろう。図2にあるように塩水対策と軽量化は欠かせない。低コスト化の他、メンテナンスのために沿岸へ陸揚げする仕組みも開発する。

図2 海面上に設置する太陽電池のイメージ。出典:NEDO

どこまでも広がる設置場所

 12のプロジェクトのうち、残る3つの設置場所はこれまでの9つ以上に対応が難しい。

 フルークの「鉄道線路内太陽光発電」はその名の通り、線路内、それも2本のレールの間に太陽電池モジュールを設置するプロジェクトだ。他の用途に使いにくい土地を有効に利用できることは間違いない。「同社は当機構に採択される以前から私鉄と協議を続けており、既に小規模な実験を実施している」(NEDO)。

 A−スタイルが実施する「耐洪水対策の特種架台の設計及び施工方法の検討」では、湿地という悪条件を乗り越えて施工する方法を開発する。「河川敷はそれなりの面積があり、研究する価値がある。同社は太陽電池モジュールで影になった部分に水質上の影響がでないかどうか、酸素(O2)濃度の変化なども調べる」(NEDO)。

 みんな電力の「コミュニティ型ベランダソーラーの研究開発」は、集合住宅のベランダを対象とする。太陽電池を設置した集合住宅は徐々に増えているものの、主な設置場所は屋根だ。ベランダへの設置は壁面設置よりも容易だと考えられる。プロジェクトでは主に発電した電力の利用形態や系統連系時の課題を洗い出す。これまでもベランダに設置する太陽電池は製品化されていたが、持ち運び可能な製品をたまたまベランダに置くという利用形態が多かった。当然、系統には連系していない。「おもちゃレベルの扱いを脱して拡大していく必要がある」(NEDO)。

 以上が、NEDOが採択した12のプロジェクトの概要だ。総事業費は約22億5000万円で、そのうち3分の2をNEDOが負担する。うち9つのプロジェクトは実証事業として2013年度から2015年度に実施する。

 フルークとA−スタイル、みんな電力のプロジェクトは可能性検討を目的としており、実施期間は1年間だ。

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