飛行機+太陽電池――連続飛行時間は?ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)

» 2013年11月22日 21時20分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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正解:

 e. 2週間

ミニ解説

 世界初のソーラープレーンが飛行したのは、冒頭で紹介したテレビアニメの初放映(1978年)よりも古い1974年のことだ。「AstroFlight Sunrise」と名付けられた無人機は、米国の航空技術者Roland Boucher氏がコンセプトを考え、社命を受けて開発した無人機だ。実際の開発ではDARPAの資金援助を受けた。

 AstroFlight Sunriseは10kgと軽かったが、全長4.36m、主翼の幅は9.8mもあった。既成品の太陽電池を翼に配置したものの、当時のシリコン太陽電池は重く、変換効率は10%だったという。28回目の飛行で高度2438mに達し、翌年には早くも蓄電池を搭載して、夜間飛行に備えたモデルも登場した。残念ながら連続飛行時間は記録に残っていない*1)

 軽く巨大な翼、蓄電池による24時間飛行など、当時既に現在のソーラープレーンの概念が登場していたことになる。

*1) AstroFlight Sunriseなど初期のソーラープレーンに関する歴史は「Unmanned Aviation: A Brief History of Unmanned Aerial Vehicles」に詳しい。

 2012年時点の世界記録は英国の防衛企業Qinetiqが資金援助した「Qinetiq Zephyr」が持っている。重量53kg、主翼の幅は22.5m。UAV(Unmanned Aerial Vehicle)と呼ばれる無人機だ。2010年7月9日に離陸したフライトでは、米国のアリゾナ州にある陸軍の基地、Yuma Proving Groundを使った。このときの飛行時間は336時間22分だ。これは2週間以上に相当する。最高高度は2万1562mに達した。

 日没後の飛行を維持するために、容量3kWhのリチウム硫黄蓄電池を搭載した。日中に太陽電池が発電した電力はプロペラ用のモーターを駆動する一方で、蓄電池を充電、夜間は蓄電池の電力で飛行した。このサイクルを14回くり返すことができたことになる。

 高度2万1562mといえば、成層圏の中間に当たる。雲はほぼ発生せず、効率良く太陽光を吸収できる。従って、機材の劣化がなければ限りなく飛行できることになる。

 ソーラープレーンにはどのような用途が期待できるのだろうか。一定の場所を円を描くように飛行することで、人工衛星よりも安価な無線中継局として役立つ。人工衛星よりも何桁も安価に付き、保守点検も容易だ。カメラを搭載することで軍用などの監視に使えると考えられている。

有人機の開発も始まった

図1 田園上空を飛行するSolar Impulse。出典:SOLAR IMPULSE

 有人機の記録もある。現在最も有望なのは「Solar Impulse」だ(図1)。初飛行は2009年6月であり、無人機が登場してから35年が経過している。このときの飛行距離はわずかに350m。2010年4月には大幅に能力が向上し、スイスで行われたテストでは高度1200mに到達、90分間飛行した。翌月には蓄電池を空にした状態で離陸し、飛行中の充電にも成功している。さらに2010年7月には26時間の連続飛行に成功した。

 2012年6月には初の大陸間飛行に挑戦、スペインのマドリードとモロッコのラバトの間830kmを19時間で結んだ。単純計算では時速44kmということになる。設計上の仕様では時速70kmで巡航高度8500m、最高高度1万2000mを36時間飛行できる。

 無人機と比較して有人機は大きく重い。全長は21.85m、主翼の幅63.4m、最大離陸重量は2トンだ。機体には1万1628枚の太陽電池セルを搭載し、最高出力45kWを得た。この他、容量21kWhのリチウムイオン蓄電池を搭載している。

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