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» 2013年12月02日 13時00分 UPDATE

電力供給サービス:日本では火力が減って原子力が復活、IEA事務局長が予測

IEA(国際エネルギー機関)の事務局長を務めるマリア・ファンデルフーフェン氏が、政府主宰の「総合資源エネルギー調査会」で今後の世界のエネルギー情勢を語った。その中で2035年に向けた日本の電力供給体制についても言及して、長期的な火力発電の減少と原子力の復活を予測した。

[石田雅也,スマートジャパン]

 IEA(国際エネルギー機関)のファンデルフーフェン氏は「福島第一原子力発電所の事故以来、日本の電力システムは極めて厳しい状況にある」と指摘したうえで、2035年までの日本における発電量の予測を電源別に示した(図1)。

 詳細な数値は不明ながら、石炭と天然ガスによる火力発電は緩やかに減少して、石油火力は2020年代にはゼロに近づく。一方で原子力は2020年までに急速に復活した後、徐々に減少していく。水力を含む再生可能エネルギーは着実に拡大して、2035年には発電量全体の25%を超える規模になると予測している。

iea_outlook2_sj.jpg 図1 日本における電源別の発電量(単位:10億kWh)。出典:OECD/IEA

 こうした予測の背景には、中国やインドをはじめとする新興国でエネルギーの需要が増え続ける結果、火力発電に使う化石燃料の価格がさほど下がらないとの見方がある。火力発電に伴うCO2排出量の問題もあり、日本を含む先進国では原子力や再生可能エネルギーに移行する可能性が大きい。

 IEAによると、2035年までに中国とインドは欧米や日本をはるかに上回る発電設備を増強する見通しだ(図2)。運転を停止する設備を除いた純増分で比較しても、中国は日本の約15倍、インドは約8倍の増加量になる。日本は8000万kW程度の純増が見込まれていて、その大半を再生可能エネルギーが占める。

iea_outlook3_sj.jpg 図2 主要国/地域における発電容量の増加(色の濃い部分が純増、単位:100万kW)。出典:OECD/IEA

 ただしファンデルフーフェン氏は「コスト効率の改善を目的とするならば、再生可能エネルギーの導入をサポートする枠組みは慎重に設計する必要がある」と警鐘を鳴らす。ドイツのように固定価格買取制度によって国全体の発電コストが大幅に上昇している状況をふまえての発言である。

 同氏は米国からのLNG(液化天然ガス)の供給拡大が市場を大きく変える可能性についても言及した。現在のところLNGの価格は地域によって大きな差があるが、2035年に向けて縮小していくと予想している。特に日本が最大の恩恵を受けると考えられていて、LNGの価格は現在の2分の1の水準に、それに伴って電力も3割くらい低い水準になる見込みだ(図3)。さらに米国内の価格が下がれば、よりいっそう安くなる。

iea_outlook1_sj.jpg 図3 主要国/地域における天然ガスと電力の価格(米国の価格に対する比率)。出典:OECD/IEA

 ファンデルフーフェン氏の予測は日本で原子力発電所の再稼働が順調に進んだ場合を前提にしているため、実際の進捗によって状況は変わってくる。とはいえ「エネルギーの世界が急速に変化している」との認識に間違いはなく、LNGの価格下落など日本経済にとって好材料が出てきたことは朗報である。

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