水道を生かす宮城県、おいしい水で発電も自然エネルギー(1/2 ページ)

小水力発電は小規模であっても水の流れと高低差があれば設置できる。多目的ダムや農業用水などへの設置が盛んだ。宮城県企業局は「水道管」を利用する。管の内部を流れる人工的な水の流れであっても発電に生かせるからだ。

» 2014年02月03日 15時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 仙台市太白区と馬越石発電所の位置

 宮城県企業局は、水道管の中を流れる水を使った発電事業に取り組んでいる。アクアパワー東北が事業実施者として契約を取り交わし、2014年1月に着工、同7月下旬に運転開始を予定する「馬越石(まごいし)水力発電所」(仙台市太白区)だ(図1、図2)。

 馬越石水力発電所の出力は250kW。年間発電量は約186万kWhであり、これは550世帯の消費電力量に相当する。固定価格買取制度(FIT)を利用して、全量、東北電力に売電する。

 企業局は施設利用量と土地の貸付料を受け取り、アクアパワー東北が固定価格買取制度(FIT)による売電収益を得る形だ。「事業総額は約2億6000万円であり、年間売電収益として約5000万円を見込む。発電量に応じて支払う施設使用料は年額600万円、土地面積に対して支払う貸付料は年額17万円である」(アクアパワー東北)。

図2 発電所を置く高区調整池の地上の様子(左)と、発電機を設置する水道の流入流量計室(右) 出典:宮城県企業局

水道を使うには3つの条件がある

 「企業局は広域水道と工業用水道を経営している。水道の流れを利用して発電し、設備で使う電力の一部をまかなえないかどうか、検討を重ねてきたものの、これまでは採算が取れないという結論が出ていた。しかし、小水力発電が固定価格買取制度(FIT)の対象となり、採算が取れるようになったことに加え、東日本大震災後の社会的な要望もあり、新事業に取り組んでいる」(宮城県企業局水道経営管理室)。FITによって小水力発電の市場規模が拡大し、機器や設置工事のコスト低減につながっていけば、新しい市場が次々と開けてくるはずだ。

 それでは水道管があれば必ず発電ができるのかというと、そうではない。条件が3つあるという。

 最初の条件は小水力発電一般に当てはまる条件だ。水量と有効落差である。馬越石水力発電所の場合は、最大1.25m3/秒を確保でき、基準有効落差は24.8mある。これで横軸フランシス水車を回し、三相誘導発電機を利用して発電する。

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