東京23区に初めての小水力発電、親水公園で2015年1月に稼働へスマートシティ

「水彩都市」を目指す東京都の江東区が、環境学習と観光を目的に小水力発電の導入を決めた。区内にある3カ所の親水公園を候補地に調査した結果、まず1カ所に発電能力7kWの設備を導入する。2015年1月に運転を開始する予定で、都心の23区では初めての取り組みになる。

» 2014年02月21日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 小水力発電を実施する「横十間川親水公園」の水門橋。出典:江東区役所

 江東区が小水力発電設備を導入する場所は、区内を流れる「横十間川(よこじっけんがわ)」を利用して造られた親水公園にある。長さ1.9キロメートルにわたって水が流れる親水公園の中間に設けられた水門橋が設置場所になる(図1)。

 発電設備は出力が最大7kWで、1日あたりの発電量は100kWh程度を想定している。年間に3万6500kWhの発電量になると、一般家庭で10世帯分に相当する。江東区では小水力発電設備を環境学習と観光に役立てる方針で、発電した電力は電光表示パネルやイルミネーションなどに利用する。

 江東区は複数の事業者から提案を募集したうえで、2014年7月から設計に入り、2015年1月に設備を稼働させる予定だ。建設費は2000万円を見込んでいる。2012年度から3カ所の候補地を対象に小水力発電の導入可能性を検討してきた結果、発電規模が最も大きい横十間川親水公園の水門橋を選定した(図2)。

図2 小水力発電を検討した3カ所の評価結果。出典:江東区役所

 都市部を流れる川や用水路は水流の高低差が小さく、発電設備にも工夫が必要になる。江東区が導入予定の設備は「縦軸クロスフロー水車」と呼ばれる方式で、垂直の軸を中心にして回転するために、高低差の小さい水流でも発電が可能になる。自治体の事例では神奈川県が高低差1.3メートルの農業用水路に導入して実証実験を進めている(図3)。

図3 クロスフロー水車を使った小水力発電設備の例(神奈川県の「文明用水小水力発電」)。出典:神奈川県県西地域県政総合センター

 このほかにも江東区は塩害対策、災害対策、除塵対策の3つを課題に挙げる。親水公園を流れる水は塩分の濃度が25%前後もあって、設備の腐食を防止する対策が必要になる。災害時には水位の上昇が予想されるために、設備を一時的に引き上げて保管する方法も検討する。さらに小水力発電は維持管理の面で流水物の除去作業が欠かせない。

 東京23区の先頭を切って取り組むプロジェクトで成果が上がれば、ほかの区や市にも広がっていく可能性は大きくなる。

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