落差1.3メートルで10kWを発電、80年前に造った農業用水路自然エネルギー

神奈川県の西部を流れる「文命用水」は80年前の1932年に造られた農業用水路だ。この用水路の水門に小型の水車を設置して10kWの小水力発電が始まった。落差がわずか1.3メートルの水流を有効に生かすため、流入と流出の両方のエネルギーで回転する水車を採用した。

» 2013年03月22日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「文命用水」で始まった小水力発電は神奈川県内で初めて、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の設備として認定された。神奈川県が推進中の「かながわスマートエネルギー構想」の一環で取り組んでいるプロジェクトで、2014年3月まで実証実験を続ける。

 発電機を設置した場所は文命用水の水門の部分で、発電に生かせる水流の有効落差は1.3メートルである。この水門を流れる毎秒1.3立方メートルの水量で10kWの発電を可能にした。年間の発電量は3万5000kWhを見込み、一般家庭で10世帯分の電力使用量に相当する。

図1 農業用水路に設置した発電機の水車。出典:神奈川県県西地域県政総合センター

 落差が小さい水流を最大限にエネルギーとして取り込むために、「垂直2軸クロスフロー水車」を採用した点が特徴だ。垂直方向に軸がある円筒形の羽根車を2つ組み合わせた構造になっている(図1)。

 水門に入ってくる水は集水板を使って有効落差を大きくしたうえで、2つの羽根車に取り込まれる。クロスフロー方式の羽根車では水が内部を交差して流れるようになっていて、流入時に加えて流出時にも羽根車を回転させるエネルギーが生じる(図2)。この作用によって発電量を大きくすることができる。幅が狭くて落差の小さい用水路に適した方法である。

図2 「垂直2軸クロスフロー水車」の水の流れ方。出典:神奈川県県西地域県政総合センター

 文命用水で発電した電力は固定価格買取制度で売電して県の収入につなげる一方、実証実験の成果を公表して県内の各地域に小水力発電を広める狙いがある。実証実験が終了した後も発電を継続する予定だ。年間の売電収入は120万円程度になる。

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