クール宅急便もワイヤレス充電、時間との勝負電気自動車(1/2 ページ)

デンソーはヤマト運輸やセブン-イレブン・ジャパンと共同で、ワイヤレス充電の実証実験を開始する。「クール宅急便」用の配送車両へ、手軽に小まめに充電することが目的だ。そのため、1回当たりの充電時間は5〜10分と短い。

» 2014年02月24日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 愛知県豊田市と実験店舗の位置(赤)

 「セブン-イレブンの店舗で荷物の集配時に配送用車両へ、1回当たり5〜10分程度継ぎ足し充電する」(デンソー)。デンソーはヤマト運輸の車両1台にワイヤレス充電装置(受信器)を取り付け、2014年2月24日から2014年12月まで実証実験を重ねる(図1)。

 ワイヤレス充電のニーズがあるのは乗用車だけではない。商用車には乗用車とは違った用途がある。配送用車両では荷物の積み下ろし時間をなるべく短くしなければならない。充電ケーブルを取り回す時間も惜しいのだ。

 実験車両は「クール宅急便」の集配用車両だ。集配用車両は冷凍室内の温度を常に低く保つ必要があり、通常、荷物の配送時にもエンジンを停止できない。電動コンプレッサーに電力を送る必要があるからだ。ここに荷物の積み卸し中はアイドリングを停止したいという要望がある。例えば、一般住宅の前に停車し、荷物を受け渡す場合だ。こうなると、本来搭載していない蓄電池を配送用車両に載せ、充電インフラと組み合わせる技術開発を進めなければならない。

 図2は実験車両に対してワイヤレス充電を進める様子だ。黄色い車止めと送信器を地表に設置したセブンイレブン豊田市上野町店(愛知県豊田市)で、指定位置に停車した車両に充電する。

図2 ワイヤレス充電を試みる配送用車両  出典:デンソー

トヨタ自動車とは採用技術が異なる

 デンソーが採用したワイヤレス充電技術は電磁誘導方式だ。トヨタ自動車が採用した磁界共鳴方式に比べ、研究や応用の歴史が長く、独自の特徴を出しやすい。「当社の方式は送電や受電に使う『パッド』を小型化しやすい。必要な出力や伝送距離を他社の方式と同じにしたときに小型化が可能になる。つまり車載に適する」(デンソー)。ただし、今回の実証実験は小型化が目的ではないため、図3に示すように特段小さくはなっていない。

 送信できる電力は4.5kW。冒頭のデンソーの発言にもあるように、継ぎ足し充電を実行するため、ケーブル式の普通充電器よりも出力が高くなっている。なお、継ぎ足し充電ではなく、車載蓄電池が空の状態から満充電状態にすることも可能だ。「その場合2時間かかる」(デンソー)。

図3 送電用パッド(下)と受電用パッド(上) 出典:デンソー
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