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» 2014年03月04日 09時00分 UPDATE

自然エネルギー:伏兵飛び出すCIGS太陽電池、米社が効率23.2%を記録

徐々に変換効率を高めてきた薄膜太陽電池が結晶シリコン太陽電池に追い付き、追い越す勢いを見せている。2014年3月には米StionがCIGS太陽電池の変換効率を一気に2.4ポイント向上。秘密はタンデム構成にあった。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 現在世界市場で最も量産規模が大きいのは結晶シリコン太陽電池だ。これを追うのが化合物薄膜太陽電池である。化合物薄膜太陽電池の変換効率は、結晶シリコン太陽電池よりも低かった。しかし、製造時に必要なエネルギーや原材料の使用量が少ないこともあってコスト面で強みがあり、一歩も引かない競争が続いている。

 化合物薄膜太陽電池では、米First Solarが量産するCdTe(カドミウムテル)太陽電池と、ソーラーフロンティアが量産するCIS(CIGS)太陽電池が有望だ。

 ここに来て、CdTeとCIGSのいずれもが変換効率で結晶シリコン太陽電池を脅かす勢いを持ち始めた。2014年2月にはFirst SolarがCdTe太陽電池セルで変換効率20.4%を記録。これは多結晶シリコン太陽電池セルの記録と同じ値だ(関連記事)。

いきなり記録を2.4ポイント更新

 2014年3月にはCIGS太陽電池に思わぬ伏兵が現れる。米Stionだ。CIGS太陽電池セルで変換効率23.2%を達成したと発表。国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が2014年2月25日に公開した太陽電池の変換効率の記録によれば、CIGS太陽電池セルの記録は2013年10月にドイツZSW(太陽エネルギー・水素研究センター、Zentrum für Sonneenergie und Wasserftoff-Forshung Baden-Württemberg)が達成した20.8%。

 つまり、いきなり2.4ポイントもCIGS太陽電池の性能が向上したことになる。Stionの記録はNRELがまとめている公的な認証を受けた数値ではないものの、明らかに優れた値だ。

 さらにStionの技術は実用化に近付いている。20×20cmサイズのプロトタイプモジュールに開発した技術を適用したところ、20.0%以上の効率を実現できたと主張する。65×165cmという商用モジュールサイズに拡張した場合でも20〜22%の変換効率を短期間で実現できる見込みが付いたという。

 図1では薄膜太陽電池技術(緑の点と線)とシリコン太陽電池技術(青の点と線)について、NRELの記録の一部を示した。CdTe(黄色の丸、20.4%)や多結晶シリコン(青の白抜き四角、20.4%)、CIGS(緑丸、20.8%)などの世界記録が見える。

yh20140304CIGS_NREL_590px.jpg 図1 太陽電池の変換効率の記録 出典:米NREL(一部のみを表示)

タンデム構成で高効率を実現

 Stionがこれほど高い変換効率を実現できた理由は、多接合(タンデム)構成を採ったからだという。同社は「Simply Betterソリューション」と呼ぶ。

 多接合の考え方はこうだ。幅広い種類の光が混じり合っている太陽光のうち、まず波長の短い光を上層の太陽電池で吸収し、上層が逃がした波長の長い光を下層の太陽電池が拾い上げる。こうすることで、波長の短い青い光からは少量ながら高いエネルギーを、波長の短い赤い光(または赤外線)からは大量の低いエネルギーをそれぞれ取り出し、足し合わせることができる。人工衛星に搭載する太陽電池などで採用例が多い手法だ。

 Stionの多接合は図2のような構成を採る。Gen 2 Top Circuitが短波長の光を吸収、Gen 1 Bottom Circuitが長波長の光を吸収する。同社の技術に特徴的なのが、上層と下層を半導体技術の適用によって積層したのではないことだ。別々に製造した層を物理的に重ねた。製造が容易なことが利点だ。

yh20140304CIGS_tandem_400px.jpg 図2 開発したCIGS太陽電池の構造 出典:Stion

 多接合技術を採用すると変換効率は高くなるものの、CIGSセルの数は単純に2倍に増える。つまり1枚のCIGSモジュールを組み立てるために必要な部材や時間が増える。上層のモジュールは長波長の光を透過させる必要があるため、裏面電極を透明にしなければならない。このような理由により、製造コストは従来技術を利用したものより高くなるはずだ。

 Stionは2010年に世界最大手の半導体受託製造企業である台湾TSMCとの間で技術・供給契約を結んでいる。TSMCはStionに資金を提供し、同社の技術を利用できる。今後、Simply Betterソリューションを適用した量産品が登場したとき、変換効率とコストアップ要因がどのような水準で釣り合うのか、期待できそうだ。

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