外気が−25度でも大丈夫、水と空気で暖める省エネ機器(1/2 ページ)

暖房機器などを開発するコロナは、ランニングコストが低い地中熱ヒートポンプを製品化している。課題は、地中熱特有の初期導入コストだ。そこで、地中熱と空気熱を組み合わせ、外気の温度に応じて制御する暖房システムを開発、2014年9月に発売を予定する。

» 2014年03月19日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 寒冷地で室内を暖める際、エアコン(空気熱)はあまり好まれない。灯油やガスなど実際の燃料を使った暖房に人気がある。「外気温が2度以下の場合、空気熱暖房の性能が落ちてしまう」(コロナ)。

 なぜか。空気熱で暖房運転するとは、外気から熱をくみ上げて室内に運び込むことだからだ。暖房運転中の室外機に近づいてみると、外気よりも冷たい空気が吹き出していることが分かるだろう。取り込んだ外気から熱を奪っているためだ。このため、外気温が低いときに暖房運転を続けると、室外機で熱をやりとりしている部分に霜が付く。霜は熱のやりとりを邪魔するため、除霜(霜取り)運転が必要だ。除霜運転中は暖房がほとんど働かない。

地中熱は外気温と無関係

 コロナは地中熱(関連記事)に目を付けた。年間を通じて温度が変化しない地下10mよりも深い地中から熱だけをくみあげて暖房に使う。従って、外気温が零下になったとしても性能が低下することはない。

図1 GeoSISの仕組みと必要な電力 出典:コロナ

 2011年に発売した地中熱ヒートポンプ温水暖房システム「GeoSIS(ジオシス) GTS-H6000」は、地下100mまでU字管を埋設し、内部に不凍液を循環させる(図1)。1単位の電力を使うと、地下の3単位の熱をくみ上げ、室内に4単位の熱を送ることができる。

 ガス式温水暖房システムと比較するとランニングコストを劇的に引き下げることが可能だ。GeoSISを北海道に設置した場合はランニングコストが約3分の1、その他の地域でも2分の1に下がる。暖房料金を削減できる。

導入コストをどうする

 だが、地中熱ヒートポンプ温水暖房システムにも課題があった。導入コストがかさむのだ。「U字管を埋設する際、深さ1m当たり1万5000円程度の工事費が掛かる」。100mなら150万円だ。GTS-H6000の価格は71万4000円(税込)。工事費が本体の2倍以上になってしまう。

 2014年3月、同社は低温下で利用しにくい空気熱と、導入コストがかさむ地中熱を組み合わせて、互いの欠点を補う製品「GeoSIS HYBRID」を開発していることを発表した。ランニングコストは従来製品のGeoSISと同じく低い。先ほどの3分の1、2分の1という数字がそのまま当てはまる。さらに導入コストも引き下げた。

 GeoSISとGeoSIS HYBRIDの違いを図2に示す。GeoSISは長さ100mのU字管を使い、暖房能力は6kW。GeoSIS HYBRIDは、U字管の長さを半分の50mに抑えている。「工事費は半分以下になる。深さが減るため、より小型の機械で埋設できるためだ」(コロナ)。

 深さを50mに抑えたことで地中熱の出力が半分の3kWに下がる。ここに5kWの空気熱を組み合わせ、合計で8kWとした。「従来製品の6kWでは(寒冷地の)家一軒の暖房には出力不足になる例があった。そこで出力を8kWに高めた」(コロナ)。

図2 地中熱だけを使う従来製品(左)と空気熱を併用する新製品(右)(クリックで拡大) 出典:コロナ
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