ヒットを連発する米企業、太陽電池で高い競争力蓄電・発電機器(1/2 ページ)

米FirstSolarは、量産ラインで試作したCdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池モジュールの変換効率が17.0%に到達したと発表した。これは同技術の世界記録である。同時に投資家向けの説明会において、変換効率のロードマップを上方修正、コストの予想値を下方修正した。

» 2014年03月25日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 米FirstSolar(ファーストソーラー)は、2014年3月19日(米国時間)、化合物薄膜太陽電池であるCdTe(カドミウムテルル)太陽電池モジュールの変換効率で世界記録を達成したと発表した。

 変換効率の値は17.0%。米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)が測定した。これまでの記録は同社が保持していた16.1%(2013年4月に発表)だった。

 太陽電池モジュールの表面には周辺領域など発電に寄与しない部分がある。そこで、実際に発電が可能な部分の面積(開口部面積)について、効率を計算すると、17.5%に相当するという。逆にいえば、同社の記録は、小サイズのセルや開口部面積だけを測定して「水増し」したものではなく、量産品と同じサイズのモジュールで達成した現実的な数字である。

 今回の太陽電池モジュールは同社の研究開発センター(オハイオ州ペリーズバーグ)で製造されたもの。同社によれば、量産プロセスを適用し、材料も量産時と同じである。同社は量産ラインに開発した新技術を1段階ずつ適用して少しずつ性能を向上させており、今回の成果はこのような新技術を数種類当てはめた結果だとした。

セルでの技術開発をモジュールにつなげる

 同社は、2014年2月にCdTe(カドミウムテルル)太陽電池セルの変換効率で20.4%という世界記録を樹立したばかりである(図1)。試作セルを作り上げた技術が早速モジュール変換効率の向上に役立った形だ。

 図1はNRELが定期的に内容を更新している太陽電池セルの世界記録一覧の抜粋だ。縁が緑色の黄色の円が、CdTe太陽電池の記録である。緑色の円はCIGS薄膜太陽電池(20.8%)、白抜きの青い三角形はシリコン薄膜太陽電池(20.1%)を表している。この3種類が薄膜太陽電池として量産されている。

 なお、青い四角は単結晶シリコン太陽電池(25.0%)、青い円はHIT太陽電池(24.7%)、白抜きの青い四角は多結晶シリコン太陽電池(20.4%)だ。以上の6種類が、家庭の屋根やメガソーラーに多く用いられている太陽電池の記録である*1)

*1) 図1に紫色で示されているのは、宇宙用や集光型太陽光発電システムに使われている多接合セルの記録を表す(関連記事)。オレンジ色は量産技術の確立途上にある新興技術だ(関連記事)。

図1 各種太陽電池セルの変換効率の推移 出典:米NRELが2014年3月19日に公開した資料から一部を抜粋

 なお、薄膜太陽電池モジュールは、レーザーなどによる「けがき」のような工程(スクライビング工程)を何度も利用して、1枚のガラス基板上に多数のセルを作り込んでいる。セル間に太陽光を利用できない微細なすき間(デッドエリア)ができるため、モジュール変換効率は必ずセル変換効率よりも低くなる。

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