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» 2014年04月04日 15時30分 UPDATE

自然エネルギー:CIS太陽電池の記録20.9%、研究成果を着実に製品へ

ソーラーフロンティアはシリコンを使わないCIS薄膜太陽電池で、変換効率の記録20.9%を達成した。同社はCIS薄膜太陽電池の量産規模が最も大きな企業。最終製品への技術移転が可能な記録であることを強調する。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 ソーラーフロンティアは2014年4月、CIS薄膜太陽電池で変換効率20.9%という記録を達成したことを発表した。小面積セル(0.5cm2)での記録であり、ドイツFraunhofer研究所が検証したもの。薄膜系太陽電池の記録としては世界最高の変換効率だと位置付けた*1)

 従来のCIGS薄膜太陽電池セルの記録は2013年10月にドイツZSW(太陽エネルギー・水素研究センター、Zentrum für Sonneenergie und Wasserftoff-Forshung Baden-Württemberg)が達成した20.8%である。薄膜系として欧米などで大量に導入されているCdTe薄膜太陽電池の変換効率の記録は20.4%だ(関連記事)。

*1) 公的機関の検証を経ていないCIGS薄膜太陽電池の成果では、米Stionの23.2%というセル変換効率がある。同社は発電層を2枚重ねる独自の構造で実現したとする。

変換効率の数字の意味とは

 太陽電池の変換効率の数字にはどのような意味があるのだろうか。戸建て住宅の所有者やメガソーラーを導入したい企業にとっては製品(太陽電池モジュール)の変換効率に興味がある。設置後の実際の発電量に直結するからだ。

 研究開発では、小面積のセルで技術を確立し、ある程度のサイズがあるサブモジュールに適用、大面積のモジュールに拡大していくことが一般的だ。今回の記録は小面積セルの値だ。モジュール化した場合、どの程度の効率を期待できるのだろうか。

 同社はこれまで、30cm角の基板で実現した高効率変換技術を、1.2m2サイズのモジュール製品へと着実に移転させてきている(図1)。

yh20140404SolarFrontier_450px.jpg 図1 ソーラーフロンティアの太陽電池開発ロードマップ。2013年2月に東京で開催されたスマートエネルギー Week 2014で展示したもの

 図1の下には製品(モジュール)の変換効率が4つ示されている。出力150Wから170Wの製品だ。「AA」とあるのは開口部面積(Aperture Area)。太陽電池には光を受け取っても発電には寄与しない部分があり、それを取り除いた面積を開口部面積と呼ぶ。170W品ではモジュール変換効率が13.8%に対し、AAは15.0%と高くなる。

 このようなモジュールを作るための技術は、図1上に描かれた3つのサブモジュールやセルの研究開発で得られたものだ。例えば30cm角のサブモジュールで17.8%を実現し、これを170W品(13.8%)に適用している。

 今回の研究成果は30cm角のサブモジュールから切り出した小面積セルで得たもの。図1の右上にある19.7%という記録(2013年)と同じ条件だ。つまり、17.8%のサブモジュールの研究が170W品に結実した場合と比べると、もう1ステップ増える形だ。

どのように改善したか

 CIS太陽電池は主に3つの元素、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)を利用している。1種類の元素しか使わないシリコン太陽電池と比較すると、元素の比率や垂直方向の層構造などを工夫する余地が大きい。このため、ソーラーフロンティアの研究開発では小さな積み重ねによって徐々に効率を改善することに注力している*2)

 今回の記録は太陽光を電気に変換している光吸収層の改善と、電極の高性能化によって実現した。同社の太陽電池は、セレン化硫化法で光吸収層の薄膜を作り上げている。銅とインジウムを基板上にスパッタ成膜したのち、セレンや硫黄雰囲気中でアニール(熱処理)することで、光吸収層を作り上げている。CIS太陽電池の光吸収層を作り上げる手法は、他に多元同時蒸着法などがある。同社は今回の記録により、セレン化硫化法が、量産に適し、さらに変換効率的にも優れた方法であることが立証されたとする*3)

 透明導電膜は光吸収層と表面電極の間に置く層。光を透過させつつ、電流を通しやすくなくてはならない。同社は透明導電膜に酸化亜鉛を利用しており、今回は透明導電膜の電気抵抗をより下げたと考えられる。

 なお、今回の研究成果は2010年度から2014年度までの新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究「CIS系薄膜太陽電池の高効率化技術の研究開発」の成果である。ソーラーフロンティアの厚木リサーチセンターで得た結果だ。NEDOによれば、5年間の研究開発予算総額は約20億円であり、成果はソーラーフロンティアの製品に適用される。

*2) 生産技術にも特徴がある。同社はセルでトップデータを得ることよりも、量産時に安定して効率を高める生産技術の改良を重視している。
*3) CIS太陽電池の変換効率を高めるため、光吸収層と透明導電膜の間に硫化カドミウム(CdS)の薄膜を形成する手法がある。同社はCdSを使わない高効率変換を目指しており、今回はCdSを用いた記録(20.8%)を超えたことにも意味があるという。

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