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» 2014年05月01日 12時00分 UPDATE

自然エネルギー:草は邪魔、水は欲しい――斜面に敷くシートが解決

山口県は維持管理に手間が掛かる道路脇の斜面(法面)を、資源に変える試みに着手した。地面に「防草発電シート」を直接設置し、草刈りの手間を省くと同時に、揚水ポンプを太陽光で動かす。

[畑陽一郎,スマートジャパン]
yh20140501Yamaguchi_map_250px.jpg 図1 山口県柳井市と石井ダムの位置

 「法面(のりめん)の草刈りの手間を省くことが第1の目的だ。手間を省き、法面を資源に変える試みである」(山口県農林水産部農村整備課)。

 山口県が2014年4月から運用を開始したのは、太陽電池を封入した「防草発電シート」だ。防草シートとは、道路脇などの斜面(法面)に草が生えることを防ぐ薄い面状の部材。薬品などを使わず、太陽光を遮ることで草の成長を妨げる。「法面の草刈りが農家の非常な負担になっている」(同課)。

 今回検証する防草発電シートは、防草シートの内部にごく薄い太陽電池を封入したもの。遮光という目的にも合致する。

 防草発電シートを設置したのは、柳井(やない)市内の石井ダム(有効貯水量113万9000トン)。石井ダム管理用道路の法面を利用した(図1、図2)。県有地である。石井ダムは水が少ない地域に農業用水を供給する目的を持った設備。「ダムの水面よりも高いところに位置する水田に農業用の揚水ポンプを使って水をポンプアップしてきた。この電力を防草発電シートでまかなう」(同課)。

yh20140501Yamaguchi_scene_344px.jpg 図2 法面に設置した防草発電シート 出典:山口県

 設置した防草発電シートは10枚(80m2)。出力は2.7kW。出力はこれで十分なのだという。なぜなら、揚水ポンプが高出力になることはないからだ。加えて「かんがい期にのみポンプに電力を供給するため、それ以外の季節は中国電力に売電できる。年間10万円程度売電できるだろう」(同課)。パワーコンディショナーなどの電気設備は柱上に設置したため、土地を使っていない。もともと揚水ポンプに電力を供給していた電柱を再利用している。

 今回の事業に対する県の予算は約150万円。内訳は防草発電シートの価格と敷設工事を合わせて100万円、電気設備に40万円、接続経費に10万円である。予算措置があるのは2013年度だけだが、今後3年間をかけて、山口県が効果を検証する。

国産の製品を採用

 今回、石井ダムに設置したのは、岡山県に拠点をもつ日本植生の防草発電シート(図3)。2011年に富士電機とコアテックが共同開発し、2012年に日本植生と2社が試験的な販売を開始した製品*1)。福島県の被災地や岡山県など全国10カ所に納入実績があるという。石井ダムの事例は山口県としては初。

*1) 富士電機のアモルファスシリコン太陽電池「FWAVE」を使用。1kg/m2と軽く、曲がって割れない。プラスチックフィルム上に太陽電池セルを載せ、耐候性フィルムで覆ったものだ。変換効率は8%。

yh20140501Yamaguchi_sheet_364px.jpg 図3 防草発電シートの外観(1枚) 出典:山口県

 防草発電シートは架台を使わず、地面に直接「貼る」ことで運用する。長さ250mmのU字形ピンを使って固定する。「斜面への設置を得意とする」(日本植生)。平地に設置する場合は3%の水勾配(水が流れるための勾配)が必要だ。

 「2.05m×4mのシート(出力270W)を38枚使って出力10.2kWとしたものを、標準ユニットと呼んでいる。この場合必要な面積は、約300m2だ。工事費と合わせた費用はkW当たり50万円程度である」(日本植生)。

【訂正】 記事の掲載当初、第5段落で「中部電力に売電」としておりましたが、これは「中国電力に売電」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。(2014年5月2日)

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