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» 2014年05月27日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2014年版(7)福島:世界最高レベルの発電技術を太平洋に集結、脱・原子力のシンボルに

日本の未来を切り開く洋上風力と石炭火力の開発プロジェクトが福島県の太平洋側で進んでいる。2020年の東京オリンピックに間に合わせて、世界で最先端の発電所からクリーンな電力を供給する計画だ。原子力からの大転換を図る構想が「FUKUSHIMA」を起点に世界へ広がっていく。

[石田雅也,スマートジャパン]

 エネルギーの分野で最先端の開発拠点と関連産業を集積して、福島県を「再生可能エネルギー先駆けの地」に発展させる。震災からの復興計画の1つとして、10年間で再生可能エネルギーを大きく伸ばして、持続的に発展可能な社会を実現する構想が進行中だ(図1)。そのシンボルになるプロジェクトが、太平洋上で始まった浮体式の風力発電である。

図1 福島県の再生可能エネルギー有望ゾーン(バイオマスと小水力は県全域)と復興計画(10年間)の推進ステップ。出典:福島県企画調整部

 国を揺るがす事故を起こした福島第一原子力発電所から沖合に20キロメートルの太平洋上に、2つの巨大な建造物が浮かんでいる。1つは発電能力が2MW(メガワット)の風力発電設備、もう1つは観測タワーを備えた変電設備である(図2)。商用レベルでは日本で初めての、浮体式による洋上風力発電所が2013年11月に運転を開始した。

図2 発電設備の「ふくしま未来」(左)と変電設備の「ふくしま絆」。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 直径80メートルに及ぶ巨大な風車が洋上の強い風を受けながら発電して、変電設備を経由して陸上まで電力を供給する。実際の発電量はどの程度か、波や潮による揺れの影響はどうか、海洋生物や漁業に悪影響を及ぼさないかなど、日本の近海に洋上風力発電を展開していくための要件を明確にすることがプロジェクトの大きな目的である。

 この実証研究は資源エネルギー庁が2011〜2015年度の5カ年計画で推進しているもので、残る期間は2年を切っている。すでに運転を開始した第1期の2つの設備に続いて、まもなく第2期の設備を近隣の洋上まで輸送する予定だ(図3)。

図3 実証研究プロジェクトの全体計画と設備。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 第2期では発電能力が7MWの超大型発電設備を2カ所に設置する。風車の直径は第1期の2倍以上になる167メートルもあり、最高到達点は海面から185メートルに達する。2種類の発電設備は浮体部分の構造を変えて、発電量や揺れの度合いなどを比較検証することになっている。

 第1期と合わせて3つの発電設備で16MWの洋上風力発電所を構成する体制だ。3基とも洋上の変電設備に送電ケーブルでつながれて、さらに20キロメートル離れた陸上まで海底ケーブルで電力を送る(図4)。洋上風力の標準的な発電効率30%で計算すると、年間の発電量は4200万kWhに達する。一般家庭で1万世帯分を超える電力を供給することができる。

図4 洋上風力発電の実施区域と超大型発電設備(右上)。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 洋上からの電力が届く陸上の地点には、東京電力の「広野火力発電所」がある。福島県内にある東京電力で唯一の火力発電所だ。この発電所の構内でも、世界で最先端を行くプロジェクトが始まろうとしている。石炭をガスに転換してから、ガスタービンと蒸気タービンで高効率の発電を可能にする「IGCC(石炭ガス化複合発電)」と呼ぶ方式に挑む。

 発電能力は50万kW(500MW)で、発電効率は50%近くまで向上する見込みだ。現在の最新の石炭火力発電と比べて2割ほど効率が高くなり、それだけ燃料の使用量とCO2の排出量が少なくて済む。環境負荷の低い「クリーンコール」を実現する技術として、今後の石炭火力で主流になっていく発電方式である。

 東京電力は広野火力発電所から南へ約40キロメートルの太平洋岸にある「勿来(なこそ)発電所」にも、同様の50万kWの発電設備をIGCCで建設する(図5)。勿来発電所は東京電力と東北電力が共同で運営している火力発電所で、すでにIGCCを採用した25万kWの発電設備を2013年から稼働させている。

図5 「勿来発電所」の全景と所在地。出典:東京電力

 現在の計画では広野と勿来の2カ所ともに2016年に工事を開始して、4年後の2020年に運転を開始する予定だ。2020年の夏には東京オリンピックが開催されるため、東京電力は2カ所のうち少なくとも1カ所をオリンピックに間に合わせる。原子力発電所の事故で大きな被害を受けた福島県をクリーンな石炭火力で世界にアピールする狙いである。

 こうして将来に向けた新しい取り組みが進む一方で、短期間に導入できる太陽光や中小水力、バイオマス発電も県内全域で急速に広がってきた。太陽光発電では各県が導入量を伸ばしている中にあって、福島県は固定価格買取制度の認定設備の規模で第4位に入っている(図6)。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

 特にメガソーラーに限定すると、2013年12月末までの1年半のあいだに100カ所が認定を受けて、発電能力を合計すると119MWに達した。北海道に次いで全国で第2位の規模になり、今後2年以内に相次いで運転を開始する見通しだ。

 このほかに風力・中小水力・バイオマスを含めて、認定を受けた設備がすべて稼働すると、福島県内の全世帯数の3分の2が使用する電力を再生可能エネルギーで供給できるようになる。さらに洋上風力や石炭ガス化火力を加えて、クリーンエネルギーの先駆けの地を形成していく。

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −北海道・東北編 Part2−」をダウンロード

2016年版(7)福島:「太陽光発電で被災地が生まれ変わる、洋上風力や地熱発電も復興を後押し」

2015年版(7)福島:「太陽光発電で全国1位に躍進、被災地に新たなエネルギーの芽生え」

2013年版(7)福島:「2040年にエネルギー自給率100%へ、太陽光を増やしてから風力を伸ばす」

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