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» 2014年05月28日 11時45分 UPDATE

法制度・規制:先進国中最低レベルの日本、2020年の省エネ基準も徹底せず

電力などのエネルギーをいかに作り出し、維持するかについて、議論が続いている。だが、エネルギーを使う側、特に長期間エネルギーを使い続ける住宅に対する取り組みが遅れていることはあまり知られていない。国土交通省の調査結果を紹介する。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 日本の住宅は質が低い。これは単に面積が小さいという主張とは違う。質についての課題はエネルギーに関するものであり、大きく2つある。

 1つ目の課題は、いったん建設した住宅を長期間良好な状態で使い続けるという視点が欠けていることだ。日本の住宅の平均寿命は26年と短い*1)。作っては壊し、作っては壊し……。これでは省エネルギー、省資源は実現しにくい(関連記事)。

*1) 1996年度の建設白書によれば、日本の26年に対し、米国は44年、英国は75年と長い。これは滅失した建物(取り壊した建物)の平均寿命である。住宅の寿命にはもう1つ指針がある。総務庁が1993年に公開した住宅統計調査などによれば、サイクル年数(国内の総建物ストック数÷新規建築件数)は、日本の30年に対し、米国は103年、英国は141年だった。以上の数字は木造住宅だけでなく、鉄骨造住宅なども含んでおり、住宅の構造材料による差はあまりない。

 もう1つの課題は住宅が消費するエネルギーが大きすぎることだ。日本国内で利用されている一次エネルギーのうち、部門別では家庭部門が約15%を占める。家庭で利用するエネルギーのうち空調が占める割合は高く、4分の1を超えるほどだ。空調に必要なエネルギーは断熱性や気密性を高めることで引き下げることができる(関連記事)。ところが日本の「次世代省エネルギー基準」(1999年基準)は先進諸国の基準と比較すると要求水準が大変に低く、法的な拘束力もない。これでは改善が進まない。

 このような状況を変えていく取り組みが進んでいる。国土交通省と経済産業省、環境省は2013年10月、住宅向けの省エネルギー基準の改正版を施行。評価の方向性を変え、より現実的な評価ができるようにした。

 これまでの基準では住宅の外皮(外壁や窓など)の性能だけを見ていた。新たに建物全体の省エネルギー性能を評価する一次エネルギー消費量の基準を追加した形だ。2015年4月には経過措置が終わり完全施行される。ここまでは基準が変わっただけだ。次は義務化である。2020年までに全ての新築住宅・建築物について省エネルギー基準への適合を義務化する。

対応が難しい木造住宅

 だが、新しい省エネルギー基準に全ての新築住宅が適合するのは難しいと考えられている。国土交通省など3省が新基準を施行する以前、2010年6月から2012年4月まで開催された「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」でも木造住宅をどのように改善していくかという議論が多数ある。

 「大工・工務店さんが供給する住宅戸数が在来木造住宅の6割で、……全ての住宅着工戸数の2割を現に占めて(いる)」と指摘し、「大工・中小工務店の省エネ施工技術の習得には時間がかかること、伝統的木造住宅では省エネ対策が困難な場合が多いことなど、義務化に向けて課題が多い」とまとめている。

約4割が義務化への理解が不十分

 このような状況は改正省エネルギー基準が施行された現在、どのように改善されたのだろうか。国土交通省は「中小工務店・大工業界の取り組み状況に関する調査」*2)の結果を2014年5月に発表した。木造住宅の主な担い手となる部門に対する調査だ。

 質問項目は大きく4つあり、省エネルギー基準適合義務化認知度と長期優良住宅*3)の他、業務体制とリフォームに関する取り組みについて質問した。

 新基準の義務化に関する質問、「2020年までに新築住宅に省エネルギー基準への適合が義務化されることについてご存じですか」に対しては「詳しく知っている」という回答は事業者のうち約12%にとどまり、「概要は知っている」という回答を合わせても6割弱という低い水準だった(図1)。特に雇用従業員数が少ない事業者の認知度が低かった(図2)。

*2) 2014年1月から3月まで、業界団体を通じて約4万5000の調査票を中小工務店や大工業界4団体の会員に配布した。回収数は2796である。
*3) 長期優良住宅の普及の促進に関する法律(2009年施行)では、住宅の耐震性と耐久性能(劣化対策)、維持管理・更新の容易性、住戸面積、省エネルギー性、居住環境、維持保全(維持保全管理と住宅履歴情報の整備)を必要な条件として示している。

yh20140528MLIT_energy_380px.jpg 図1 省エネルギー基準適合が義務化されることに対する理解 出典:国土交通省
yh20140528MLIT_energy_bar_590px.jpg 図2 規模が小さな事業者ほど理解が浅い 出典:国土交通省

 「これまでに、元請により省エネルギー基準(次世代省エネ基準(平成11年基準)等)を満たす住宅を施工した実績はありますかという問いに対して、「ある」と答えた事業者は43.2%と少ない。あると答えた事業者の平均施行件数は23件であるため、省エネルギー基準に対する取り組みが、全くない事業者とかなりある事業者へと二極化している可能性が高い。

 長期優良住宅に関する取り組みも十分ではないようだ。「元請けにより施工した住宅で、長期優良住宅の認定を取得した実績はありますか」という問いに対して、「ある」は25.3%にとどまり、平均戸数が11.6件だったからだ。「今後、長期優良住宅にどの程度取り組んでいく予定ですか」という問いに対して、「現状維持」と答えた事業者が44.9%と最大だった。

 日本全体のエネルギー需給を長期的に安定化するためには、節電や発電、蓄電以外にも改善の余地が大きい。

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