首都圏の地下鉄を運営する東京メトロが、電車の回生電力を駅構内の電気機器にも供給する仕組みを導入した。電車がブレーキをかけた時に生じる直流の回生電力を交流に変換して、駅の照明や空調、エスカレータなどで利用する。1つの駅で1日に600kWhの電力量を見込んでいる。
電車がブレーキをかけた時に発生する回生電力は、近隣の電車同士で融通し合う利用方法が一般的である。それでも使いきれない回生電力が多く残るため、東京メトロは新たに駅構内の電気機器でも利用できるようにした。東京都と千葉県を結ぶ東西線で6月14日の始発から、妙典(みょうでん)駅の構内に電力の供給を開始した(図1)。
東西線は一部の区間で地上を走り、妙典駅も地上にある。駅の線路沿いに「駅補助電源装置」を設置して、回生電力を変換する仕組みだ。電車が発生する回生電力は直流の1500V(ボルト)で送られてくる。これを駅補助電源装置で交流の210Vに変換したうえで、駅の構内に送って照明や空調、エスカレータなどで利用する(図2)。
駅の構内にある電気室では、通常は鉄道用の変電所から送られてくる高圧6600Vの電力を受けて、電圧を下げてから電気機器に供給している。今後は駅補助電源装置からの低圧210Vの電力と組み合わせて供給する形になる。回生電力を活用することで1日に600kWhの節電効果を見込んでいて、一般家庭で60世帯分の使用量に相当する。さらに同様の仕組みを2014年度内に追加で7カ所の駅に導入する計画だ。
東京メトロは2020年度の鉄道事業で消費するエネルギーの総量を2009年度の実績(998万ギガジュール)よりも低く抑える長期目標を掲げている。その一環で東西線の地上駅に太陽光パネルを設置して「東西線ソーラー発電所」の建設計画を進めている(図3)。2014年度内に設置が完了して発電規模が1MW(メガワット)に達する予定だ。太陽光発電の電力も駅構内のエスカレータなどで利用する。
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