電力小売自由化で利用者の意識、「原子力を保有する電力会社は選ばない」が3割に電力供給サービス

電力小売の全面自由化で利用者の選択条件はどう変わるのか。楽天リサーチが全国1000人を対象に調査したところ、自由化によって電力会社以外から電力を購入できるようになることを回答者の6割が認識していた。特に原子力発電を理由に電力会社を敬遠する意向が明確に表れている。

» 2014年07月23日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電力に対する国民の関心はまったく衰えていない。楽天リサーチが全国の20代〜60代の男女1000人を対象に実施した調査で、小売の自由化や電気料金の値上げ、さらに今夏の節電を含めて、各年代の意識・関心の高さが浮き彫りになった。

 電力の自由化によって電力会社以外から電力を購入できるようになることを知っている人は60.5%に達した(図1)。年代別では年齢が高くなるほど認知度も高くなるが、20代でも46%と半数近い人が認識している。多くの人が単にニュースとして知っているだけではなく、電気料金や原子力発電の動向をふまえて関心を持っている。

図1 2016年に小売自由化によって電力会社以外から電力を購入できるようになることの認知度。出典:楽天リサーチ

 電力会社を選ぶときの電気代の許容範囲を聞いたところ、原子力発電所を保有する電力会社に対しては「電気代に関わらず選択したくない」との回答率が29.2%に達した(図2)。「毎月の電気代が1000円以上ダウンするなら許容できる」の18.1%を加えると、半数近い利用者が電力会社の対応に厳しい目を向けていることがわかる。

図2 電力会社を選ぶときの許容範囲。出典:楽天リサーチ

 特に女性では3分の1にあたる33.0%が原子力発電所を保有する電力会社を選択したくないと答えている(図3)。年代別では40代と60代で原子力を拒否する傾向が強く表れる。一方で30代は相対的に寛容で、「電気代が現状と同等なら許容できる」と回答した人が48.0%にのぼった。

図3 原子力発電所を保有する電力会社の許容範囲。出典:楽天リサーチ

 この調査は楽天リサーチに登録している約230万人のモニターから抽出した1000人を対象に、7月9日〜11日にインターネットを使って実施した。自由化のほかに節電の意識についても聞いている。家庭内で日常的に節電を意識しているかどうかを聞いた結果では、節電意識が「非常に高い」と「やや高い」を合わせると56.0%を占めて、今年の夏も前年と変わらない節電意識が続いている(図4)。

図4 家庭内の節電意識(回答者数:1000人)。出典:楽天リサーチ

 さらに電気料金の増加額と節電意識の相関についても興味深い結果が出た。月間の電気料金が500円増えると、電力の使用量を最低限に抑えることを意識する人が4割を超える(図5)。もし月に1000円増えた場合には、全体の7割以上が使用量の抑制を意識するようになる。

図5 電力使用量を抑える意識が働く電気料金の増加額。出典:楽天リサーチ

 もはや電力会社は電気料金を値上げしても、販売量が減って売上の増加につながらない構造になっている。今後も利用者数を維持して売上を増やすためには、原子力発電所を再稼働させずに、電気料金を値上げしないで済む方法を模索するしかない。

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