性能を高め、使いやすくするには何が必要? 基本に立ち返ったSiCパワコン蓄電・発電機器(1/3 ページ)

三菱電機は2014年11月以降に順次発売を開始する住宅用パワーコンディショナーを「PV Japan 2014」で展示した。高性能な半導体である「SiC」を採用したモデルが注目を集めていたが、それ以外にも多数の工夫が凝らされていた。

» 2014年08月01日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 三菱電機は、太陽光発電に関する総合イベント「PV Japan 2014」(2014年7月30日〜8月1日、東京ビッグサイト)において、住宅用のパワーコンディショナーの新製品を展示した。2014年11月以降に順次発売を開始するPV-PNシリーズ4製品だ(図1)。

 パワーコンディショナーは太陽電池が作り出す直流電流を、家庭内で利用できる交流電流に変換する装置。従って、ニーズは大きく2つある。なるべく多くの電力を得る性能と、家庭内の利用シーンの幅を広げる機能だ。

 性能面では3点を改善した。変換効率と、日射の変動への対応力の高さ、売電が難しい環境での対応力だ。3点ともより多くの売電が可能になる特徴である。

 家庭内のニーズでは、これまで設置が難しい室内にも設置できるようになったことと、非常時に利用できる電力が増えたことをうたう。

図1 三菱電機の新型パワーコンディショナー(SiCを使用したモデル) PV Japan 2014における展示

売電量を高める3つのポイントを改善

 新製品の変換効率は98.0%*1)と高い(図2)。三菱電機によれば住宅用パワーコンディショナーとして業界最高の変換効率だという。太陽電池が生み出した直流電力をより多く交流電力として取り出すことができる。これが第1の改善ポイントだ。

*1) 新製品は4つのモデルからなる。98.0%は、SiCパワー半導体を用いたPV-PN44KX(4.4kW出力)での値。シリコンパワー半導体を用いたPV-PN30K(3kW出力)と同40K(4kW出力)、同55K(5.5kW出力)の変換効率は96.0%。

図2 変換効率が98%を超える。PVJapan 2014での展示

 新製品ではパワーコンディショナーが内蔵する「スイッチ」部分に一般的なシリコンとは異なる物質を利用した。SiC(炭化ケイ素)だ(図3)。SiCは理想的なスイッチとして機能する*2)ため、高い変換効率が得られた形だ。

*2) 直流を交流に変換するには、太陽電池から一定の電圧で送られてくる電流を、毎秒100回(または120回)、電圧が正負に変わるように変える必要がある。パワーコンディショナー内部には、最低4つのスイッチが内蔵されており、4つのスイッチが2つずつ組みになっている。2組のスイッチを高速に入り切りすることで、このような変換を実現している。複数のスイッチを組み合わせて直流から交流を作り出す際、同時に4つのスイッチがオンになる時間があってはならない(交差点にある交通信号の動作と似ている)。そのため、必ず4つのスイッチがオフになっている期間がある。この期間には電力が無駄になるため、なるべく高速で動作するスイッチが必要だ。さらにスイッチ部分自体も電力を消費する。SiCはいずれの性能もシリコンより高い(ターンオン特性の高さとオン抵抗の低さ)。なお、スイッチだけでは、ジグザグ波形(直角状の波)の「交流」となり、強い高周波ノイズを生み出す。そこで、変換後に平滑回路を通して、きれいな波の形(正弦波)に変えている。

図3 SiCの利点。PVJapan 2014での展示
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