3番目のポイントは、売電の機会を広げたことだ。売電を中断するように働く「電圧上昇抑制機能」を別の機能と組み合わせることで、売電機会を少しでも稼ぐ。
屋外から電力を供給している商用電力(系統)はほぼ一定の電圧を保っている。ここにパワーコンディショナーが電力を送り込む(売電する)ためには、より高い電圧で送出しなければならない。もしも系統の電圧が通常よりも高いときにパワーコンディショナーが働くと、系統の電圧がさらに高まってしまう。これを防ぐのが電圧上昇抑制機能だ。パワーコンディショナーの一般的な機能である。
新製品では電圧上昇抑制機能が働く前に、進相無効電力制御を働かせることで、系統の電圧がより高まることなく売電できる(図6)。なお、電圧上昇抑制が起こっているかどうかは、ユーザーからは分からない。そこで、新製品では本体のLEDディスプレイに電圧上昇抑制機能が働いたことを知らせる表示を付け、改善した。
新しいパワーコンディショナーの改善点は売電できる電力が増えたことだけではない。家庭内の一般的なニーズにも応えている。まず、非常時に心強くなった。停電時に自立運転へ切り替えると、合計2.0kW〜2.7kWの電力を利用できる(図7)*4)。
*4) PV-PN30Kと同40Kが2.0kW、SiCを内蔵する同44KXが2.2kW、同55Kが2.7kW。パワーコンディショナー内部の端子(設置工事の際、家庭内の一部の配線に接続する)と、コンセントの2系統を備える。後ほど説明する内線規定に従わなければならないため、いずれも1つ当たりの電力は1500Wに制限されている。
これまでの家庭用太陽光発電システムでは、例え屋根の上に5.5kWの太陽電池モジュールが設置されていても、停電時には1.5kW(1500W)しか利用できなかった。残りは全くの無駄になる。「内線規定」*5)に1コンセント当たりの最大電力が1500Wとあるからだ。「東日本大震災以前は、いかに多くの電力を出力するかだけに注目が集まっていた。パワーコンディショナーに出力用のコンセントを設けると部材コストが上がるため、この1500Wすら不要だという意見が社内外にあったほどだ」(三菱電機)。
*5) 電気事業法にある技術基準は経済産業省の省令で定められている。この省令を解釈した「電気設備の技術基準の解釈」を民間規格としてまとめたもの。
パワーコンディショナーに対するもう1つのニーズは、設置場所の制限がないこと。パワーコンディショナーは売電の都合上、家庭内の配電盤のそばに設置する必要がある。あまり目だたず、配電盤から近い位置となると、水回りが挙げられる。「新製品は結露しない場所であれば、湿度が高いところにも設置できるようにした。例えば脱衣場だ」(同社)。主要な回路を密閉構造にすることで実現した。
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